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TISネットワーク通信vol.42-COLUMN

消費者志向経営の視点から考えるカスタマーハラスメント対策

公益社団法人 消費者関連専門家会議 専務理事 齊木茂人

 2026年10月1日、改正労働施策総合推進法が施行され、事業主の対策が義務になります。指針では、カスタマーハラスメント(以下、カスハラ)への方針や、対処すべき内容、周知事項が明確になりました。特に悪質と考えられるものへの対処など、必ず講じなければならない措置として10項目が示されています。組織として対策が進むことで、安心して消費者の視点に立った対応を進めることができるという点において、消費者志向経営につながる重要なことと言えます。

 一方、カスハラ行為がクローズアップされることで消費者が萎縮することが危惧されます。実際に企業へ声を寄せたお客さまから、「これってカスハラにはなりませんよね」といった声も出ています。「消費者の声は減らすのではなく、増やすべき」という考え方が浸透しつつある中で、消費者の声が減少することは、望ましい姿とは言えません。

 そこで、企業と消費者それぞれの視点から考える必要があります。まず、企業の視点から考えてみましょう。消費者には権利があることを全従業員が認識することが重要です。消費者には知る権利や選ぶ権利、意見を言う権利などが消費者基本法において明文化されています。消費者対応をする際には常に意識しておく必要があります。次にお客さまの声は貴重であり、お客さまの声なくして企業の発展はないという視点です。お客さまの声は、商品・サービスの改善や開発、さらには経営にも生かすことができます。この視点を、お客さま対応における中核に置く必要があります。そのため、安易にカスハラと決めつけないという視点が求められています。

 次に消費者の視点です。近年、企業への問い合わせが減少傾向にあると言われています。その要因としては、AIやSNSを活用した自己解決が増えているためと考えられます。若年層を中心に電話離れの傾向もあるでしょう。しかし、「企業はお客さまの声を待っている」という視点を、消費者の方にも認識してほしいと思います。行政や企業は消費者に対して、企業へ申し出をする際には冷静に伝えることの大切さを、消費者啓発の一環として発信する必要があります。消費者の方もカスハラに関心を持ち、「自分は関係ない」ではなく「誰でも当事者になり得る」という視点を持つことが求められます。威圧的な態度や執拗な要求に至らなくても、舌打ちやため息などをした際に相手にどう伝わるか、自分が同じことをされた場合を想像することが大切です。また、事業者からの忠告や警告に素直に耳を傾ける姿勢を持つことで、カスハラ行為の未然防止につながると言えます。

 企業、消費者、行政が正面からカスハラ問題に向き合うことは、リスクコミュニケーションとしてだけでなく、消費者志向経営の推進と消費者市民社会の形成につながる重要なことと言えます。