韓国においては、経済・社会・環境などの様々な分野における主体が相互に連結性を理解し、社会全体が持続可能な発展をするという目標達成のため、政府が「持続可能な開発のための国家基本戦略」を定め、さらには、この戦略に基づく「持続可能な開発基本計画」を5年ごとに策定し、具体的な取り組みを進めることとされています。この計画においては17の目標と、それを細分化した119の個別目標、236の指標が設定されており、政府部門のみならず、地方自治体・民間事業者・家庭・個人などあらゆる主体が様々なステージで取り組むこととされています。
計画は極めて広範な分野にわたるものでありますが、ここでは市民にとって最も身近なテーマの1つである「ゴミ問題」について紹介します。ゴミ問題は、この計画の中の主要なパートを占めるものの一つであり、具体的に「食品の生産・流通および消費過程で発生する食品損失や食品廃棄物を削減します。」ということが計画に掲げられています。また、このような動きを受け、政府の「資源循環基本計画」においても具体的な目標として、2027年度までにごみ発生量を20%削減することや、資源循環利用率を70.3%から82%に引き上げることなどが定められています。
ゴミ問題と一口に言っても様々な問題がありますが、ここでは生ごみに焦点を当てて紹介することとします。では、韓国における生ごみはどのように処理されているのでしょうか。
各家庭から排出されるごみは大きく「リサイクル廃棄物」と「生ごみ類の廃棄物」、そしてこれら以外の「一般廃棄物」の3つに分けられます。リサイクル廃棄物はその名の通りリサイクル可能な廃棄物のことであり、プラスチックやペットボトル、紙類、ビン・缶などであり、日本の多くの自治体で行われているものと同様、洗浄してラベルなどを剝がした上で、分別回収されることとなります。他方、生ごみ類の廃棄物については、日本と異なる仕組みが採用されています。
韓国において、家庭から出る生ごみは、家畜の飼料や堆肥などにリサイクルを前提に処理されることとなります。このため、各家庭において、1.異物を除去し、2.動物が食べられない物を分別し、3.水気を絞った上で、排出する必要があります。ここでいう「異物の除去と分別」には動物・魚の骨や果物の種などのほか、玉ねぎやニンニクの皮・トウモロコシの芯なども飼料に適さないとの理由で、除去する必要がある物に含まれます。(なお、ゴミの出し方を案内する自治体のホームページには「唐辛子の種や茎も異物に含まれる」という記載があり、家庭においても大量に唐辛子を使用していることが伺われ、こういうところにも「韓国っぽさ」が感じられます。)
ソウル特別市永登浦区ホームページ(生活案内>廃棄物排出方法(日本語))
https://www.ydp.go.kr/japanese/contents.do?key=4206&
このように各家庭で処理された生ごみは、「RFID食品廃棄物個別計測器」という機械の箱に入れてゴミとして出すこととされています(RFID食品廃棄物個別計測器が設置されていないエリアにおいては指定された食品ごみ収集容器に出すこととなります。)。筆者が住むアパートにも、このRFID食品廃棄物個別計測器が設置されており(写真)、日常的に利用しています。
この計測器は、入居時に受領したカードをかざすと蓋が開くようになっており、そこに処理済みの生ごみを入れると、入れられた生ごみの重さに応じて課金されることとなります。料金は自治体によって異なりますが、例えば、ソウル特別市永登浦区の場合は1kgあたり130ウォン(14円程度)と、高額というほどではないものの、「毎日の生ごみの量を考えると、増えないように工夫したいな」という気持ちになる程度の絶妙な値段設定になっています。
生ごみの量が増えると、支払わなければならない金額が増えていくこととなるため、住民としては「生ごみを減らそう」という意識が自然と働くことになり、住民の意識を無理なく生ごみの削減に向けさせることができる優れた仕組みだと感じました。
このように行われている生ごみの分別回収ですが、これを効率的に進めるいくつかの工夫が見られます。一つは一般ごみを排出するための袋の有料化です。このようなゴミ袋有料化の取り組みは日本の自治体でも広く見られ、とりわけ珍しいものでもありませんが、生ごみの従量課金がある中でゴミ袋の有料化を行うことにより、「生ごみは異物除去・分別など面倒だが、もし仮に一般ごみとして出すとしても、一般ごみの袋も有料だからなぁ…」と、経済的な側面からも自主的に生ごみの分別回収へ向かわせる仕掛けが施されています。
このことに加え、アパートのゴミ回収場所にはCCTV(防犯カメラ)が設置されていること、ルールに違反した場合は罰金が科されることがあることなどといった仕組みも組み込まれ、生ごみの削減と分別回収によるリサイクルが進められています。
ゴミ問題は市民にとって最も身近な問題であり、他方、全世界に共通する地球規模の問題でもあります。韓国においてどのような取り組みが進められているのか、我々も引き続き関心をもって注視してまいります。