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TISネットワーク通信vol.38-COLUMN

熱気に溢れたとくしま高校生ETHICAL SUMMIT 2025

横浜国立大学 名誉教授 西村隆男

 猛暑真っ盛りの去る8月25日から2泊3日の合宿研修会、高校生エシカルサミットが四国大学交流プラザで開催されました。これまでのエシカル甲子園から趣きをがらっと変えて、学校で取り組んだ成果の発表会ではなく、専門家の話を聞き、フィールドワークも体験し、グループ討議を繰り返し新たな気付きを課題解決へ結びつけるという大いなる試みでした。県内の高校生よりも県外参加が多かったのに驚きましたが、福島や沖縄からなど全国各地から集まった約60名の生徒たちは、連日遅くまで学校を超えた初対面の高校生同士のグループ討議を重ね、最終日には内容の濃い発表をしました。

 初日は専門家らによるパネルディスカッションでした。農水省みどりの食料システム戦略グループ室長の坂下誠さん、多彩な経験を持つソーシャルグッド・プロデューサーの石川淳哉さん、エシカル甲子園OGで八芳園交流コンテンツプロデュースの藤井実音さん、海外からはオーストラリア、エディスコーワン大学3年のシャーロット・ブラウンさんがオンラインで参加してくれました。筆者はモデレーターとしてディスカッションに加わりました。

 坂下さんは化学農薬削減、無農薬など2050年のCO2ゼロ目標に向け、みどりの食料システム法を制定し戦略的に行っているとの紹介などを、石川さんは社会課題を解決するには暮らしの実装が不可欠と力説され、知ることからやることへの転換の大切さを訴えました。藤井さんは、社内でのエシカルの取り組みとして、マツシゲートという交流施設の紹介をしました。シャーロットさんは、大学や高校、地域で取り組む食料廃棄を削減してコンポストによる堆肥化や飼料化による持続可能性サイクルの実践を話してくれました。会場の生徒から次々と質問も出て、緊張感の中にも活気あふれる内容であったと思います。

 休憩をはさみ、四国大学副学長の加渡いづみ先生のファシリテートによる賑やかなグループ討議となり、先生の話術に高校生たちはすっかり呑み込まれ、生徒同士お互いに和みながら話し合いにも熱がこもっていきました。何が問題で、どうしたらよいか各自が考えを付箋に書き出し、それを見せ合いながらグループとして何を取り上げるべきか早速議論が深まっていきました。

 第2日は、3つのコースに分かれたフィールドワークでした。南部コースは地産地消のレストラン「ウトウーク」さんと放置竹林を活用した「におメンマ」さんを、中・北部コースは循環型農法の「NOUDA」さんと食品ロス削減に取り組む「阿波の北方農園」さんを、西部コースは傾斜地農耕システムを取り入れた「田口農園」さんと耕作放棄地活用の「はなみち農園」さんを、それぞれ現地体験も取り入れていただき訪問学習をしました。

 筆者は南部コースに同行しました。ウトウークの木元靖博社長はスライドを準備され、地元の食材へのこだわりなど、「業種は心の満腹業」と自身を表現し地域の人と人とのつなぎ役として食と人の大切さを話され、その後、手作りパスタやハンバーグなどのランチをいただきました。また、におメンマの仁尾修治さんには、実際に放置竹林に足を運び、実際にチェーンソーで切った竹を希望者が持ち上げ、重さなどを感じる体験もできました。おみやげに商品のメンマを全員が頂きました。

 高校生たちは、ホテルに宿泊しフィールドワークもこなし、時間を作っては交流プラザや、夜間はロビーや駅隣接のスタバなどを使って議論したようです。

 第3日はいよいよ成果の発表です。当日もプレゼン準備に早くから会場の交流プラザに集まってパワーポイントの調整に時間を費やしていました。すべての発表を紹介する紙幅はありませんが、印象的だったいくつかを紹介します。

 「日常にエシカル」「エシカル実は普通のこと」など、エシカルと構えることなく自然に生活の中で取り込めるようにマークをつけて可視化するとの発表や、「エシカルを吸い込もう」との不思議なテーマのグループは、シリコン製のマイストローの持ち歩きを提案しました。「食べようつながろうプロジェクト」と銘打って、地域の空き家や一人暮らしの高齢者宅の庭を活用して、野菜作りをするとした意表を突く展開の発表グループなどもありました。また、廃棄寸前の規格外の作物の活用術として、酢の物つくりやスムージー作りを推奨する発表も興味深いものがありました。

 最後に生徒同士の投票により、ベストパフォーマンス賞などが授与され、教育長、知事の挨拶で全日程を無事終了しました。各グループには討議の相談役としてエシカル甲子園のOB、OGがメンターとして加わってスムースに進んだことも含め、企画された教育委員会の先生方の高いご見識と行動力には大いに敬服しました。お疲れさまでした。