EUでは、2024年5月に「エコデザイン規則(ESPR)」が欧州理事会で採択され、将来的に未使用製品の廃棄が禁止されることが決まりました。一方、他の加盟国に先駆けて、フランスでは2020年2月から「循環経済法(AGEC法)」に基づき、繊維製品の売れ残り商品の廃棄がすでに禁止されています。
フランス政府は、衣料品廃棄量が年間70万トンに達し、そのうちの3分の2が焼却や埋め立て処分されている現状を打破すべく、衣料品の製造から廃棄までの環境負荷を評価する仕組みであるエコスコアを通じた消費者教育を推進しています。この取り組みは、フランス国内のみならずEU全体にも影響を与えています。EUでは2022年に「持続可能な製品イニシアチブ(SPI)」を公表し、ファストファッション規制やリサイクル義務化を含む新たな指針が打ち出されました。この政策は「使い捨て文化」を根絶することを目標としており、フランスを含む各国での実施が進む見通しです。
また、フランスでは、2023年に衣料品の修理補助制度が始まりました。生産者などが拠出する基金から衣料品の修理費用の一部を補助するものです。これにより、消費者が衣類を捨てるのではなく修理して長く使う選択肢を取りやすくなることが期待されています。特にフランスの主要都市では、修理専門店やエシカルファッションを掲げるブランドが増加しており、サステナブル消費のトレンドが消費者の日常に浸透しつつあります。
一方で、事業者側には新たな課題が浮上しています。エコスコアや修理補助制度の導入には、環境データの収集や新しい製品設計のコストが発生するため、企業にとっては経済的負担となる場合があります。企業規模に応じて規制までに一定の猶予措置を設ける等、環境と経済の両立を目指す取り組みを進めています。
フランスとEUのファストファッション規制は、消費者、企業、政府が一体となり、持続可能な未来を築くためのモデルケースとなるでしょう。持続可能なファッションとは、長く使用できる高品質な製品であり、修理可能な点が真のサステナビリティにつながります。また、トレーサビリティの確立、資源の保全、そして循環型モデルの実現は、ファッション産業において欠かせない取り組みとなるでしょう。