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TISネットワーク通信vol.31-COLUMN

バイオ燃料の原料回収を増やすアプローチ

鳴門教育大学大学院 学校教育研究科 教授 坂本 有芳

活用が進むSAF

 SAFとは何か、知っていますか? Sustainable Aviation Fuelの略で、直訳すれば持続可能な航空燃料のことです。ジェット機などに使われている航空燃料は、原油を精製して作られています。地下に貯まっている原料を取り出して燃やす化石燃料は、使えば使うほど大気中に二酸化炭素を排出します。原油から製造された燃料を大量に消費する航空機は、排出するCO2の量も膨大です。

 そこで、バイオ燃料を使おう、つまり燃料の原料を植物や使用済みの食用油などの植物由来のものに変えようという動きが、世界で急速に進んでいます。もちろん、バイオ燃料であっても燃やす際には二酸化炭素が排出されます。しかし、原料ができる過程では植物が光合成を行い、大気中の二酸化炭素を吸収するので、採掘→燃焼といった一方向でCO2を増やすわけではありません。バイオ燃料の利用によってCO2の排出量は80%程度も減らせるといいます。このことから、現在、SAFは原料の世界的な争奪戦や国産化の取り組みが急速に進んでいます。

使用済み食用油の回収を増やすには

 使用済みの食用油が原料になるということは、私達のキッチンも原料生産に一役買うということです。そこで、家庭からの原料回収をどうやったら増やすことができるのかをテーマに、全国で回収制度を設けている自治体の住民を対象とした調査を実施しました。得られた全国4,160人のデータを用いて分析したところ、食用油の回収率は、自治体による回収方法とその認知度によって明らかに異なることが示されました(図)。

 まず、制度についてです。回収制度は「1 最寄りのごみ収集所で回収する方法」と、「2 公民館やスーパーマーケットなど特定の回収場所に持ち込む方法」とがあります。比較すると、「1」の方法のほうが明らかに回収率は高いことが分かりました。回収場所が限られているよりも、近場で出せるようになっていることが重要なようです。また、ごみ収集所で回収している場合には、回収日が明記された「ごみカレンダー」が配布されていることも多く、これが回収率向上に一役買っているとも推察されます。

 そして、認知度についてです。使用済み食用油の回収制度があること、そして回収された食用油の活用方法を知っているかどうかによっても、明らかに回収率は異なりました。最寄りのごみ収集所で回収している自治体に住んでいて、制度も活用方法も「両方知っている」場合は、80.2%が回収に参加しているのに対し、「どちらも知らない」場合は17.3%に留まりました。やはり、回収制度はもちろんのこと、回収した食用油がどのように活用されるのかまで知ってもらうことが重要だとはっきりと確認できました。

徳島県でも進めよう

 バイオ燃料の使用によりCO2の排出量は80%程度も減らせるのですから、これに取り組まない手はありません。回収した使用済み食用油を県内で燃料に精製できれば、エネルギーの地産地消にもつながります。どこでどのように回収するとよいのか、考えるべき点は多々あると思いますが、「使用済み食用油を回収に出す」ことが脱炭素社会の実現に大切であることを、多くの人が理解することが第一歩です。

 持続可能な社会への歩みは、このような日常生活にある小さなことの積み重ねです。小さなことを多くの人が実践できるよう、参加しやすい仕組み作りを考えるとともに、それぞれの取組みの意義をしっかりと伝えてゆければと思います。