先月、国立社会保障・人口問題研究所が発表した世帯数の将来推計によると、9年後の2033年には1世帯当たりの平均人員が2人を下回り1.99人となるという。徳島県の場合、1980年には3.34人だった平均人員も減少を続け、1995年には2.96人、2010年には2.52人、そして今年4月の時点では2.23人となっている。かつて「モデル世帯」と呼ばれた4人家族、つまり夫婦と2人の子どもで構成される世帯は、もはやモデルではなくなっている。また、同時に全世帯に占める単独世帯も増加を続け、地域の中で世帯の高齢化と単身が進むことになる。まさに「高齢者おひとり様社会」の到来である。
「高齢者おひとり様社会」では、電気や水道といったライフラインの使用料金が割高になり、社会インフラを維持するための様々なコストの負担が増すことが予想される。消費者に占める高齢者の割合が大きくなることで商品の購買量は小さくなり、商品の販売は小口化するだろう。契約に対する意思表示や金銭管理のサポートをはじめとして、おひとり様と地域社会のつながり方モデルが求められることは明らかである。つまり、持続可能な地域社会を支えるためには、「今まで通り」の消費生活スタイルでは立ち行かなくなるのである。
SDGsのゴール12「持続可能な消費と生産のパターンを確保する」では、商品の生産から消費者の手に渡るまでのサプライチェーン、さらには消費者の手を離れ廃棄された後のプロセスに至るまで、ライフサイクル全体がサステナブルであることが求められている。
このサステナブルなサプライチェーンの確立のためには、事業者には次の3つの視点が重要と考える。まず社会全体として天然資源への負荷を軽減し商品の生産回数を減らすこと、そして商品の高品質化と長寿命化を図ること、事業者は消費者の「買い替え」によって利益を得るスタイルから、メンテナンスやリペア、アフターフォローといった消費者との”関係時間”によって利益を得るスタイルへの転換を図ることである。これは、地域社会におけるサーキュラーエコノミーの実現でもある。
人口問題は、決して占いではない。過去に生まれた人数がわかっている以上、将来の人口は推計ができる。確実に訪れる「静かな有事」は、私たちの消費生活を変化させる。現在世代のニーズを満たしながら、将来世代のニーズを満たすために、消費者も事業者も改めて「今まで通り」の価値観から脱却する岐路に立っているのではないだろうか。