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TISネットワーク通信vol.30-COLUMN

テキストマイニング技術を用いた消費者問題の傾向分析

消費者庁新未来創造戦略本部 大原 海里

 テキストマイニング技術は、定型化されていない文章の集合からなるテキストデータをフレーズや単語に分解して詳細に解析し、有用な情報を抽出する分析手法です。消費者庁新未来創造戦略本部では、その中でも文章に含まれる話題(トピック)を抽出する手法であるトピックモデリングを用いて、2020年及び2021年の消費生活相談のうち新型コロナウイルス感染症に関連するものを分析しました。

 各年における新型コロナウイルス感染症関連の相談から、8つのトピックを抽出したところ、下の図のとおりとなりました。2020年には特別定額給付金の支給に便乗する詐欺や、感染症の拡大に伴いサービスを受けられなくなったことによる旅行や結婚式等のキャンセル料や返金、マスクの品不足及び通販等で購入した商品に関する消費生活相談が多かったことが分かりました。2021年にはキャンセル料や返金に関する相談が引き続きみられたほか、新たにマスクの送り付け、ワクチン接種の予約電話、ワクチン接種に関連した詐欺及び感染症拡大の長期化に伴う収入減少や借入金返済に関する相談もみられるようになりました。

 さらに、これら2年間を対象に、相談のトピックが連続する2か月間でどれほど類似しているかを数値化することで、月別のトピックの時系列変化を可視化しました。3種類の異なる指標を用いて時系列変化を分析したところ、下の折れ線グラフのとおりとなりました。値が0を下回る場合にはトピックに変化があったといえるところ、2020年1月から2月、2020年3月から4月、2020年12月から2021年1月、2021年3月から6月、2021年7月から9月の5つの期間において、トピックの変化があったことが分かりました。

 また、これら5つの期間のうち、新型コロナウイルス感染症が日本国内で拡大しはじめた2020年1月から2月の期間を除く4つの期間において感染症の拡大に伴う緊急事態宣言が発令されていることから、感染症の拡大という社会情勢の変化は消費者問題の内容の変化にも影響を与えていることが分かりました。

 新型コロナウイルス感染症のように、突発的に発生した事案に伴う消費者問題の早期把握は難しいことですが、トピックモデリング及びトピック間の類似度の数値化を通してトピックの時系列変化を表現することで、同様の突発的な事案が生じた際に新たに発生する消費者問題を早期に発見することが可能となるのではないかと考えております。

2020年の消費生活相談における新型コロナウイルス感染症関連のトピック
2021年の消費生活相談における新型コロナウイルス感染症関連のトピック
2年間の新型コロナウイルス感染症関連トピックの時系列変化
新型コロナウイルス感染症関連の相談件数の推移(月別)