消費者庁によると、エシカル消費とは地域の活性化や雇用などを含む、人・社会・地域・環境に配慮した消費行動を指すとされています。地域へ配慮したエシカル消費としては地産地消、環境へ配慮したエシカル消費としては食品ロスの低減が含まれます(注1)。日本の教育現場では、文部科学省が、「食品ロスの削減、地産地消の推進及び食文化の継承といった我が国の食をめぐる諸課題に取り組むため、学校給食の献立や児童生徒に対する食に関する指導等の工夫に加えて、学校給食を提供する仕組みを効果的かつ効率的に運用することが必要である」として、「社会的課題に対応するための学校給食の活用事業」を平成28年から令和2年にかけて実施してきました(注2)。海外の教育現場ではどのような取り組みが行われているのでしょうか。本稿ではサステナビリティ先進国の一つと言われているスウェーデンから、地方自治体の取り組みを取り上げてご紹介したいと思います。
【ヘルシンボリ市の学校給食における取り組み】
ヘルシンボリ市はスウェーデン南部に位置する都市であり、人口は150,975人(2022年12月31日現在)です(注3)。スウェーデンの観光促進を図っている組織であるVisit Swedenによると、同市は、住民の生活を向上させるために技術革新を活用する能力を最も高く評価された欧州の都市に贈られる「icapital」と呼ばれる賞を受賞した都市です(注4)。
同市は、食品廃棄を半減させ、学校での気候変動に配慮した食品の割合を増やすことを目的とした「SmartMat Hbg」というプロジェクトに取り組みました。このプロジェクトはスウェーデン環境保護庁から資金提供を受け、2018年8月から2020年6月の間実施され、現在も取り組みは続いているそうです。同市が公表しているプロジェクトの最終報告書(注5)によると、以下のような取り組みが実施されてきました(注6)。
学校現場での取り組みの中には、生徒が調理場を視察し、調理師の仕事や、なぜ野菜中心の料理が出されるのか、どうすれば食品廃棄物を削減できるのかといった内容のプレゼンテーションを他の生徒に対して行った学校もあり、こういった取り組みは、給食が提供される背景の理解が深まり、他の生徒に伝えるという機会も子どもの成長につながる良い取り組みではないかと感じました。
この「SmartMat Hbg」プロジェクトの成果として、2017年から2020年の間に、同市の学校における食品廃棄量は半減し、1人当たり75グラムの食品を捨てていたのが、38グラムになり、年間約120トンの食品を削減したことになったそうです(注6)。
同市担当者によると、現在、1人当たり30グラムまで減らすことを新たな目標として取り組みを続けているとのことです。同市は2030年に気候への影響をゼロに近づけることを目標にいくつかのアクションを公表しており、その中に学校給食の廃棄削減も含まれている他、エシカル消費に関連する取り組みも取り上げられています。以下リンクより同市の取り組みをご覧いただけます。
ヘルシンボリ市ーTilsammans mot klimatneutralt Helsingborg
https://helsingborg.se/bo-bygga-och-miljo/klimat-och-miljo/tillsammans-mot-klimatneutralt-2030/sa-tar-helsingborg-tag-i-omstallningen/
注1 消費者庁
https://www.ethical.caa.go.jp/ethical-consumption.html
注2 文部科学省
https://www.mext.go.jp/a_menu/sports/syokuiku/1388910.htm
注3 Helsingborg‐Statistik
https://helsingborg.se/kommun-och-politik/statistik/
注4 Visit Sweden
https://visitsweden.com/where-to-go/southern-sweden/skane/helsingborg-innovative-coastal-city-with-history/
注5 Helsingborg‐slutrapport
https://media.helsingborg.se/uploads/networks/1/2018/12/slutrapport-smartmat.pdf
注6 Helsingborg‐SmartMat Hbg
https://helsingborg.se/forskola-och-utbildning/helsingborgs-stads-skolor/skolmat/smartmat-hbg/
※ヘルシンボリ市の取り組みを本記事で紹介することについて、同市から許可を得た上で掲載しています。