文字サイズ

やさしいブラウザ・クラウド版はこちらからご利用下さい
ロゴ

TISネットワーク通信vol.29-REPORT(クレア)

エシカル消費を推奨するアメリカの団体の活動について

 2022年時点において中国に次いで、世界第2位の二酸化炭素排出国であるアメリカ※1では、ドナルド・トランプ大統領のもと2019年11月に気候変動に関する国際的な枠組みであるパリ協定からの離脱が正式表明されたあと、ジョー・バイデン大統領に政権が移り2021年1月に同協定への復帰が表明された。クリーンエネルギー経済の構築を公約に掲げたバイデン大統領は、2022年8月、家計の光熱費の節約、環境にやさしい車両の導入、クリーンエネルギーを活用した製造業の支援などを促進するための約20の税制優遇を含む「インフレ抑制法案(InflationReductionAct)※2」に署名し、気候変動に関する取組を強力に推し進めている。

 一方で、世界各国が本格的な温室効果ガスなどの環境問題に関する対策が始まる以前の1980年代初頭から、アメリカにおいては、市民レベルで森林破壊や気候変動への対応、生物多様性維持、農村部における児童労働、強制労働、低賃金、劣悪な労働条件の是正などを求めて、サステナブルな行動、エシカル消費を推奨する団体が設立され、活動が続けられてきた。

「レインフォレスト・アライアンス認証マーク」※4より引用

 例えば、1987 年に設立された「レインフォレスト・アライアンス(Rainforest Alliance※3)」は、アメリカでも活動をしており、カエルのマークでお馴染みの「レインフォレスト・アライアンス認証※4」は有名で、認証マークはその製品(または特定の成分)が、人と自然が調和して繁栄する世界を創造するために協力する農家、林業者及び・又は企業によって生産されたことを意味している。現在、58カ国において生産者や森林コミュニティと協働し、コーヒー、カカオ、バナナ、茶類ほか、果物、ナッツ類、ハーブ・スパイス類、ココナッツ油、切り花など幅広い作物を認証作物としている。

 また、1982年に設立された「GreenAmerica※5」が毎年実施している個性的な取組「チョコレート・リテーラー・スコアカード※6」を紹介したい。一般的にスコアを付けるのであれば、チョコレートを製造している大手メーカーと思われるかもしれないが、近年小売業者が、自社の名前を冠してチョコレートを製造し、自らの店舗で販売しているプライベートブランド商品の市場規模が拡大していることから、リテーラーに着目してスコア付けをしている。児童労働環境の改善、森林破壊への対処、フェアトレードに関する基準からスコアが導かれ、スコアは消費者に分かりやすいようにグッドやバッドマークで示され、具体的な店舗名もこの団体のホームページで公表される。

「チョコレート・リテーラー・スコアカード」※6より引用

 これらの市民団体等が行う認証・評価システムについては、その団体の独自基準であり、賛否もあることには留意する必要がある一方で、様々な課題に対して世界各国が本格的な対策を開始する前からこうした独自基準が取り組みを進めてきたことは特筆すべきであろう。今後もエシカル消費のさらなる推進に向けてこうした団体などの動向も注目される。