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TISネットワーク通信vol.24-COLUMN

特殊詐欺等の消費者被害における心理・行動特性に関する研究

市原 健一(消費者庁新未来創造戦略本部)

 徳島県の発表によれば、令和4年の徳島県内における特殊詐欺の認知件数は38件(前年比-1件)、被害総額は7,536万円(前年比-5,486万円)であり、65歳以上の高齢者の被害認知件数は約6割を占めています。
 一方、日本全国に目を向けますと、本年5月現在、警察庁発表の特殊詐欺被害に関する統計における暫定値によると、令和4年の全国の特殊詐欺の認知件数は17,520件(前年比+3,022件)、被害総額は361.4億円(前年比+79.4億円)と、前年と比較して認知件数及び被害額ともに増加しています。「オレオレ詐欺」や「還付金詐欺」等といったワードを見聞きすることも少なくありませんが、上述のように依然として、多くの被害が発生しているのが実情です。
 特に65歳以上の高齢者の被害認知件数は、被害者全体の86.6%を占めている状況にあり、高齢化が加速する現在、被害の防止を推進するため、消費者の心理・行動特性等を明らかにし、より効果的な防止策を講じていくことも重要な課題となっています。
 消費者庁新未来創造戦略本部では、このような特殊詐欺の全国的な実態を踏まえ、被害を受ける側の心理的特性に着目の上、アンケート調査や分析を行うなどして、より効果的な啓発や注意喚起等に役立てることを目的とする研究を行いました。
 本研究の結果によると、”特殊詐欺等の消費者被害に遭った経験がある人は、経験のない人に比べて楽観性バイアスが強く(他者に比べて自分が被害に遭う確率を低く見積もる傾向が強い)、また、年齢とともにこの傾向が強くなる”ことが分かりました。
 加えて、”楽観性バイアスが強ければ、対処行動(録音機能付き電話を設置する等)が起こりにくい”という指摘もあるため、楽観性バイアスの程度に応じて啓発内容を変化させていく必要性があることが、本研究の結果から示唆されました。
 本研究の詳細については、消費者庁ウェブサイト内「特殊詐欺等の消費者被害における心理・行動特性に関する研究」(https://www.caa.go.jp/policies/future/icprc/research_007/)をご参照ください。
 消費者庁新未来創造戦略本部における本研究結果が、関係機関の皆様が特殊詐欺に関する消費者被害防止に係る活動等を行う際の一助となれば幸いです。

消費者被害の有無と楽観性バイアスの平均値(※1)
固定電話の防犯機能(※2)

※1特殊詐欺等の消費者被害に遭った経験がある人は、経験のない人に比べて楽観性バイアス(他者に比べて自分が被害に遭う確率を低く見積もる傾向)が強い

※2看破者(特殊詐欺を見破り被害に遭わなかった者)に比べると、被害に遭い被害届を出した者は対処行動(録音機能付き電話を設置する等)を取っている割合が低い