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TISネットワーク通信vol.21-COLUMN

ダークパターンと持続可能な消費

カライスコス アントニオス(京都大学大学院法学研究科准教授)

 ダークパターンとは

 特に最近、消費者法では「ダークパターン」がますます注目を集めている。ダークパターンとは、ウェブサイトやアプリなどで使用される、消費者の誤認を生じさせるような要素のことである。その目的は、消費者に、何かを購入させたり、契約をさせたりするなど、本来の意思に沿わない決定を誘導することにある。ダークパターンの代表例としては、ホテルの予約ウェブサイトで、同じホテルや部屋を同時に閲覧している人の数を表示したり、入会はオンラインでできるのに退会については電話に限定したり、メールマガジンの配信にチェックが入っている状態がデフォルトとされたり、商品が残りわずかであると表示したりするものなどがある。

 持続可能な消費への影響

 ダークパターンは、消費者による意思決定のみならず、持続可能な消費にも悪影響を及ぼしている。たとえば、2022年にスイスで行われた調査では、同国のオンラインでのファストファッション業界は、より多くの商品の購入、アカウントの作成とニュースレターへの登録、ウェブサイトを通じたキャンセルの困難性、広告クッキーの拒絶の煩雑性等を誘発させるダークパターンに依拠しているとの結果が得られた。このように、不要な消費や大量消費を直接または間接的に導く手法が持続可能性に及ぼす負の影響は、大きい。他方で、ごく例外的に、持続可能な消費に寄与する方向性でダークパターンが用いられることもある。たとえば、消費者をより持続性のある消費へと誘導するような場合である。

 ダークパターンの規制

 ダークパターンは、法規制の視点から問題視されているが、日本法ではこれを直接規制する立法はまだない。他方で、EUでは、2022年のデジタル・サービス法(DSA)によって、ダークパターンを禁止する規定が導入されている。日本で今後ダークパターンについてどのような議論がされていくのか、注目に値しよう。