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TISネットワーク通信vol.21-COLUMN

特殊詐欺等の消費者被害の防止に向けて

久保 慧(消費者庁新未来創造戦略本部)

 特殊詐欺とは、毎年警察庁が作成している「警察白書」によれば、被害者に電話をかけるなどして対面することなく信頼させ、指定した預貯金口座への振込みその他の方法により、不特定多数の者から現金等をだまし取る犯罪の総称です。日本全体における特殊詐欺の被害額は平成26年をピークに減少傾向にあるものの、徳島県警の公表資料を見ると令和3年の県内の被害額は約1億3,022万円(前年比約3,858万円増加)、件数は39件(同13件増加)と被害額・件数とも前年より増加しています。また県内の被害者の約6割が65歳以上の高齢者となっており、全国的に見ても特殊詐欺の被害者は高齢者が多いことが特徴です。

 消費者庁新未来創造戦略本部では、高齢者を中心に特殊詐欺等の消費者被害が発生している実態を踏まえ、消費者被害に遭いやすい方の心理社会的特徴について分析するとともに、消費者被害の未然防止に向けた効果的な情報発信方法の研究を進めています。研究の一環として、とくしま生協にご協力いただき組合員の方に消費者被害に関するアンケートを実施しました。

 調査結果から、特殊詐欺等の消費者被害に遭った経験がある方は経験のない方に比べて楽観性バイアスが強い(他者に比べて自分が被害に遭う確率を低く見積もる傾向が強い)傾向がみられました。また、回答者の属性と、警察や行政に情報提供あるいは相談することへのメリットやデメリットの認識との関連性には特徴がみられました。その特徴から、男性の方や独居の方、外出頻度が少ない方に向けて情報提供のメリット(情報提供することで犯人逮捕に繋がる、被害を減らせる等)を積極的に広報し情報提供を促す必要性も示唆されました。詳細については、本年11月に消費者庁HPで報告書を公表(以下URL参照)していますので、興味のある方は是非ご一読ください。

報告書(プログレッシブ・レポート)の公表ページURL: https://www.caa.go.jp/policies/future/icprc/research_007/

「消費者志向経営」について

峰 健司(消費者庁新未来創造戦略本部)

 「三方良し」という言葉を聞いたことはありますか?
 「三方良し」は、近江商人が商売の基本とした共通の理念で、「売り手よし、買い手よし、世間よし」というものです。
 この「三方良し」は、消費者庁が推進する「消費者志向経営」に通じる考え方です。
 「消費者志向経営」は消費者の視点に立ち、持続可能な社会を作るため、自らの社会的責任を自覚して企業活動を行う事を基本とした、SDGs(持続可能な開発目標)とも深い関連のある活動です。

 消費者庁新未来創造戦略本部(以下「未来本部」という。)では、「消費者志向経営」に真摯に取り組むことを事業者が自主的に宣言する「消費者志向自主宣言・フォローアップ活動」を推進しています。
 徳島県を中心に、地方公共団体や経済団体などと連携し、事業者に当活動への参加を呼びかけており、令和4年9月末時点で徳島県内の自主宣言事業者数は65社となっており、東京に次いで全国第二位の事業者数となっています。

 令和4年10月6日には中四国各県の生活協同組合及び行政機関が参画し、第37回中四国生協・行政合同会議が開催されました。
 この会議には未来本部次長も出席し、消費者志向経営に関する報告を行ったほか、中四国地域の生活共同組合からの活動報告等がありました。
 また、同年10月24日には、「とくしまSDGsシンポジウム2022」が開催され、「DX・GX新時代における消費者志向経営とエシカル消費」をテーマに、講演、パネルディスカッションが行われ、徳島県内および県外事業者の消費者志向経営取組事例や取り組んで得られた効果の発表、これから取り組もうとする事業者へのアドバイスがありました。

 未来本部では徳島県を起点とした「消費者志向経営」推進活動を、中四国をはじめ全国に広げるため、また、消費者志向自主宣言事業者数の更なる拡大や当活動の認知度向上に向け、今回の会議及びシンポジウムで得た知見を参考にしつつ、引き続き取組を進めてまいります。

令和4年10月6日第37回 中四国生協・行政合同会議の様子
令和4年10月24日「とくしまSDGsシンポジウム2022」の様子