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勝浦発電所の経緯

勝浦発電所は、洪水調節、かんがい、工業用水及び発電等の多目的ダムとして建設した正木ダムの水を取水し発電するダム水路式発電所で、昭和52年5月一部運転を開始、昭和52年11月全運転を開始しました。現在、最大出力11,300kW、常時出力770kWとなっています。

また、発電所の運転方法は、勝浦川の流量が少ないときはピーク発電となるため、勝浦発電所に設置されているダムゲート自動制御装置により、発電所の下流約450m地点にある棚野ダムゲートを制御し、勝浦発電所からの発電水量を逆調整することにより、下流の水位変動を緩和しています。

なお、平成11年4月1日に運用を開始した総合管理推進センターから遠隔監視制御しています。

勝浦発電所完成直後(昭和52年5月)の画像
【勝浦発電所完成直後(昭和52年5月)】
  
勝浦発電所(現況)の画像
【勝浦発電所(現況)】
  
変電所の画像
【変電所】

工事計画

勝浦発電所の目的

勝浦発電所は「勝浦川総合開発事業」の一環として建設されたもので、同開発事業は、多目的ダムの正木ダムを築造して洪水被害を防ぐ治水、かんがい、工業用水などを供給する利水とともに、ダム下流に勝浦発電所を設けて発電するのが目的の事業でした。

また、当発電所は勝浦川水系唯一の発電所で、県営発電所としては第4の発電所であり、開発事業の社会的・経済的効果は大きく、県民期待の事業でした。

計画の概要

正木ダム下流の勝浦郡勝浦町大字棚野に勝浦発電所を建設し、夏期360万m3、冬期1,060万m3の貯水量を利用して最大出力11,300kW、年間5,200万kWhの発電を行う計画でした。

発電に使用する水量の算出に当たっては、四国地方の電力使用量ピーク時間や下流用水補給量などを考慮し、経済効果、発電効果の高い水量として10.0m3/sを決定しました。

建設工事

□正木ダム

「勝浦川総合開発事業」の中核となる正木ダムの建設工事は、昭和48年6月に着工し、昭和52年8月に竣工しました。

工事は前後10回におよぶ岩盤検査を行い慎重に実施しましたが、3回にわたって崩落が生じ(昭和49年1月1日、昭和50年8月23日、昭和50年11月10日)、大幅な工期の遅延を招くもととなりました。この崩落事故に対処して、復旧工事を実施するとともに、さらに精密な地質調査を実施し、対策を講じました。同地点は地すべり土塊が3ブロックに分かれて存在し、ダム湛水後、水没斜面の崩壊や、水位下降時の残留水圧などによる地すべり崩壊のおそれがあると判断されたため、法枠工による地山保護や鋼管杭工などによる対策工を施工しました。特に急傾斜地でも施工が可能なロックアンカー工法は有効でありました。

□勝浦発電所

勝浦発電所は、正木ダムの建設と並行して昭和48年から建設工事を実施、ダムの湛水を開始した翌月の昭和52年5月11日から発電を開始しました。これはダム本体竣工式に先立つ3か月前のことでした。

同発電所の工事は、ダムの直上流右岸(上勝町大字正木字古請14-1)に設けた取水口から導水する内径2.36m、坑長6,097.5m、動水勾配1/582の馬蹄圧力隧道を建設し、ダム取水点から約3kmの立川谷で立川の水(最大取水量3.0m3/s)を自然流下方式によって取水・合流させて勝浦町大字棚野字立川口まで導水する設備としました。立川取水は、土砂を沈殿させる沈砂池、気泡除去室を経て本水路(圧力隧道)に接続しました。

また、水車・発電機などを備える発電所施設の基礎工事は、従来の地盤よりも最大掘削高14.0mをオープンカットし、岩着させる方法で実施しました。

□棚野ダム

棚野ダムは、ピーク発電を行う勝浦発電所の発電水量を調整し、下流の水位変動を緩和する目的で、勝浦発電所の下流約450mの位置に建設しました。

当初計画では、直線重力式越流型コンクリートダムで、高さ5.5m、頂長65.0mで、幅3.0mの鋼製ローラーゲートを設置する予定でありましたが、工事計画認可後、調整池内の堆砂量が当初計画を上回ることが予想されたため、計画を変更し、高さを8.5m、頂長を56.9mとしました。また、幅3.0mの水位調整ゲートと、幅28.0mの洪水吐ゲートを設置しました。

建設費用

 約48億5千万円(うち電気事業者分:約44億9千万円)

棚野ダム右岸側ピア施工中(昭和50頃)の画像
【棚野ダム右岸側ピア施工中(昭和50頃)】
  
棚野ダム洪水吐ゲート据付状況(昭和52頃)の画像
【棚野ダム洪水吐ゲート据付状況(昭和52頃)】
棚野ダム完成直後(昭和52年5月)の画像
【棚野ダム完成直後(昭和52年5月)】
  
カニ専用魚道設置(平成7年)の画像
【カニ専用魚道設置(平成7年)】