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PRTR制度について

概要

 化学物質は、私たちの生活を豊かにし、また生活の質の維持向上に欠かせないものとなっています。その一方で、日常生活の様々な場面や、製造から廃棄に至る事業活動の各段階から多種多様の化学物質が環境に排出されています。その中には、焼却などに伴って非意図的に発生するダイオキシン類や内分泌かく乱作用が疑われている物質(いわゆる環境ホルモン)など、人の健康や生態系に悪影響を及ぼすおそれがある物質もあり、化学物質の環境リスクに対する不安が存在することも事実です。

 化学物質は種類が非常に多く、現在使われているものは世界全体で約10万種、日本で数万種あると言われています。したがって、全ての化学物質について、人の健康や生態系への影響に関して十分な科学的知見を整備するためには、きわめて長い時間と膨大な費用を要するため、規制を中心とした従来の法律による対応には限界があることが指摘されていました。このような状況を踏まえ、化学物質がどのような発生源からどれくらい環境中に排出されたかを把握・集計し、公表する仕組み(PRTR制度)を定めたのが「特定化学物質の環境への排出量の把握等及び管理の改善の促進に関する法律」(化管法)です。

 化管法では、一定の要件を満たす事業者は、毎年度自らが取り扱う化学物質の前年度における環境中への排出量等を把握し、県を経由して、国に届け出ることになっています。

PRTRの仕組み

 対象としてリストアップされた化学物質を製造したり使用したりしている事業者は、環境中に排出した量と、廃棄物などとして処理するために事業所の外へ移動させた量を自ら把握し、年に1回国に届け出ます。国は、その届出データを集計するとともに、届出の対象にならない事業所や家庭、自動車などから環境中に排出されている対象化学物質の量を推計して、2つのデータを併せて公表します。

 また、個別の事業所ごとの届出データについても、国への開示請求等により、誰でも入手して見ることができます。

 PRTRは単なる化学物質の排出・移動量のデータですが、これがきちんと集計され公表されることによって、事業者自らの排出量の適正な管理に役立つとともに、市民と事業者、行政との対話の共通基盤ともなります。こうしたことを通じて、化学物質の環境リスクの削減等が図られるものと期待されます。

PRTR制度の仕組み

PRTRでわかること

 PRTR制度では、事業者が国へ報告した対象化学物質の年間排出量・移動量の集計値と、家庭、農業、自動車などからの年間排出量の推計値が公表され、次のようなことがわかります。

  • 全国の事業者が大気、水、土壌へ排出している化学物質とその量の集計
  • 全国の事業者が廃棄物として処理するために事業所の外へ移動している化学物質とその量の集計
  • 全国の家庭、農業、自動車などから排出される化学物質とその量の推計値
  • 化学物質別の排出量・移動量
  • 業種別の排出量・移動量
  • 都道府県別の排出量・移動量

 個別事業所のデータは、国へ開示請求により誰でも入手することができます。また、環境省のホームページ上でも公表されています。

 なお、PRTR制度では環境中に排出された化学物質の名前や年間排出量を把握することはできますが、排出量だけでは人の健康や生態系にどのような影響を及ぼすかについての判断はできません。人の健康や生態系への影響については、PRTRのデータに加え、化学物質の有害性の程度やその物質が主に環境中のどこにどれだけ存在しているか、分解・蓄積しやすいかどうかといったさまざまな要因とあわせて考えることが必要です。

届出対象物質

 人や生態系への有害性(オゾン層の破壊を含む)があり、環境中に広く存在すると認められれる物質として、462物質(第一種指定化学物質)が届出対象となります。

 第一種指定化学物質には次のような物質が含まれています。

第一種指定化学物質の一例
揮発性炭化水素 ベンゼン、トルエン、キシレンなど
有機塩素系化合物 ダイオキシン類、トリクロロエチレン、PCBなど
農薬 フェニトロチオン、クロルピリホス、D-Dなど
金属化合物 鉛化合物、有機スズ化合物など
オゾン層破壊物質 CFC、HCFCなどのフロン類
その他 石綿など

 なお、第一種指定化学物質のうち、発がん性がわかっている石綿、ダイオキシン類、ベンゼンなど15物質については、さらに、特定第一種指定化学物質に指定されています。

届出対象事業者

 次の要件1、2及び3を全て満たす事業者が届出対象となります。

【要件1】対象業種(24業種)に該当する事業を営んでいる

■ 対象業種一覧

1. 金属鉱業

2. 原油・天然ガス鉱業

3. 製造業(全業種)

○食料品製造業、○飲料・たばこ・飼料製造業(酒類製造業、たばこ製造業)、○繊維工業、○衣服・その他の繊維製品製造業、 ○木材・木製品製造業(家具を除く。)、○家具・装備品製造業、○パルプ・紙・紙加工品製造業、○出版・印刷・同関連産業、○化学工業(塩製造業、医薬品製造業、農薬製造業)、○石油製品・石炭製品製造業、○プラスチック製品製造業、○ゴム製品製造業、○なめし革・同製品・毛皮製造業、○窯業・土石製品製造業、○鉄鋼業、○非鉄金属製造業、○金属製品製造業、○一般機械器具製造業、○電気機械器具製造業(電子応用装置製造業、電気計測器製造業)、○輸送用機械器具製造業(鉄道車両・同部分品製造業、船舶製造・修理業、船用機関製造業)、○精密機械器具製造業(医療用機械器具・医療用品製造業)、○武器製造業、○その他の製造業

4. 電気業

5. ガス業

6.熱供給業

7.下水道業

8.鉄道業

9.倉庫業

10.石油卸売業

11.鉄スクラップ卸売業

12.自動車卸売業

13.燃料小売業

14.洗濯業

15.写真業

16.自動車整備業

17.機械修理業

18.商品検査業

19.計量証明業

20.一般廃棄物処理業(ごみ処分業に限る。)

21.産業廃棄物処分業

○特別管理産業廃棄物処分業

22.医療業(※平成22年4月1日から)

23.高等教育機関

24.自然科学研究所

【要件2】常用雇用者数が21人以上である

 常用雇用者数は、事業所単位(各工場や各事業所ごと)ではなく、事業者単位(会社全体)で判定します。

【要件3】次の①又は②に該当する

①第一種指定化学物質のいずれかを1年間に1トン以上(特定第一種指定化学物質については0.5トン以上)取り扱う事業所を有する

 1年間とは、4月1日から3月31日までの期間です。

 対象物質を含有する製品を取り扱っている場合は、その含有率から正味の取扱量を算出して判定します。

 元素化合物の形で指定されている物質については、当該元素量に換算して判定します。

②特別要件施設を設置している事業所を有する

 次のうち、いずれかに該当する事業所を有する事業者です。

  • 金属鉱業または原油・天然ガス鉱業を営み、鉱山法第13条第1項の経済産業省令で定める施設を設置している。
  • 下水道業を営み、下水道終末処理施設を設置している。
  • ごみ処分業または産業廃棄物処分業(特別管理産業廃棄物処分業を含む。)を営み、一般廃棄物処理施設または産業廃棄物処理施設を設置している。
  • 廃棄物焼却炉など、ダイオキシン類対策特別措置法第2条第2項に規定する特定施設を設置している。