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地方分権改革について

これまでの改革の成果と現状

 平成5年6月に、衆参両院において憲政史上初めてとなる地方分権の推進に関する決議が行われ、我が国において地方分権の積極的な推進を図る新たな時代が幕を開けた。

 第1次地方分権改革では、平成7年に成立した地方分権推進法に基づく地方分権推進委員会の勧告事項を中心に、機関委任事務制度の廃止とそれに伴う自治事務・法定受託事務の区分の創設、国の地方に対する関与を限定した上でその法定主義を明記するなど、国と地方の事務の区別を明確にした上で、国の地方に対する関与をルール化する改革が行われた。

 第2次地方分権改革においては、平成 18 年に成立した地方分権改革推進法に基づく地方分権改革推進委員会の勧告を受け、多くの権限移譲や義務付け・枠付けの見直しなどが実現した。また、「国と地方の協議の場」や提案募集方式など、地方の声を国の制度や施策に反映する制度も導入され、地方分権改革推進委員会による勧告や、地方分権改革有識者会議による審議を受け、地方分権一括法が成立している。

 こうした一連の改革は、国と地方の関係を「上下・主従」の関係から、「対等・協力」の関係へと変え、地方自治体の自主性・自立性を高める方向で推進されてきたものと言える。しかし、一般に法令の規律密度が高い上、「従うべき基準」をはじめとして、制度の細かな運用の部分まで国の法令が関与するなど、地方が自ら意思決定するための自治立法権を十分に行使できない現状も依然として存在し続けている。

【参考】地域の自主性及び自立性を高めるための改革の推進を図るための関係法律の整備に関する法律(地方分権一括法)の概要

提案募集方式による徳島県の取組み

 地方の発意と多様性を重視した、制度改正の提案を広く募る「提案募集方式」が平成26年度から導入され、全国の自治体から数多くの提案が行われている。徳島県においても、この提案募集方式を活用して、国に対して様々な提案を行っている。

主な提案実績(徳島県)
平成26年以降の徳島県の地方分権改革に関する主な提案
提案年 提案項目 求める措置の具体的内容 実現内容(各省庁の対応)
平成26年 農地の転用に関する事務 農林水産大臣許可案件(4ha以上)の権限を地方に移譲すること。 農地を確保しつつ、地域の実情に応じた主体的な土地利用を行う観点から、農地転用許可に係る事務・権限が移譲された。 ・2~4haの農地転用に係る国協議は廃止 ・4ha超の農地転用に係る事務・権限は、国との協議を付した上で、都道府県 (下記の指定市町村にあっては、当該指定市町村)に移譲 ・農地等の農業上の効率的かつ総合的な利用の確保に関する施策の実施状況 を考慮して農林水産大臣が指定する市町村に都道府県と同様の権限が移譲された。
平成26年 指定検査機関(食鳥検査法の指定検査機関)の指定等の権限移譲 食鳥の指定検査機関の指定・監督の権限を都道府県に移譲すること。 食鳥検査に係る指定検査機関の指定・監督権限が都道府県、保健所設置市及び特別区へ移譲された。
平成27年 浄化槽市町村整備推進事業における「複数戸に1基の浄化槽の設置」についての要件緩和 浄化槽市町村整備推進事業において、浄化槽は1戸に1基が原則で、敷地内に浄化槽を設置する場所がない場合等以外は複数戸に1基の共有設置は認められていない。市町村設置型の更なる効率的な整備の実施や住民の負担軽減を図るため、事業要件を緩和し、複数戸に1基の共有浄化槽を一般化すること。 効率的な浄化槽の整備を図るため、共有浄化槽を設置できる土地を市町村が確保することなどを前提として、複数戸に1基の浄化槽を設置する場合についても地形等の特殊状況によらずに助成の対象とできるよう「浄化槽市町村整備推進事業実施要綱」が改正された。
平成28年 「子ども・子育て支援交付金補助要綱」の対象経費の明確化 病児・病後児ファミリー・サポート・センターの円滑な設立・運営のため、「子ども・子育て支援交付金」の対象経費を明確化し、「感染症対策に要する経費」についても対象になる旨明記すること。 子ども・子育て支援交付金の交付対象事業のうち、子育て援助活動支援事業(ファミリー・サポート・センター事業)については、感染症対策に要する消耗品等の経費が交付対象経費に含まれること等が、地方公共団体に平成29年1月26日に通知された。
平成29年 新技術等を活用した橋梁点検を可能とするための点検手法の緩和 近接目視が基本とされている橋梁点検について、高解像度カメラや赤外線センサー等を搭載した車載カメラを用いた点検手法、IOT、UAV、次世代赤外線画像判定支援システム等の新技術を活用した点検手法など、安全かつ円滑な手法で効率的な点検が可能となる、近接目視と同様の点検精度を持った、新技術による点検を可能とするなど要件を緩和すること。 橋梁等の点検を支援する技術について、実現場での検証・評価が実施され、評価の完了した技術について結果が公表された。橋梁等の点検に係る支援措置について、道路メンテナンス会議を通じて地域一括発注の一層の活用促進が周知された。定期点検の在り方について、社会資本整備審議会・道路分科会・道路技術小委員会の中で審議され、点検の効率化や合理化を図った定期点検要領が平成31年2月に改正された。
平成29年 学校給食費に係る既存の支援制度の見直し 学校給食を安定的に実施するため、経済的に困窮している世帯に実施している各種支援制度による就学援助費のうち学校給食費相当額について、保護者の委任状なしに直接学校等へ交付できるよう制度の見直しをすること。 学校給食費に係る就学援助費については、学校給食そのものを現物給付として提供する場合等は保護者の委任状を要しないことが、地方公共団体に通知された。(平成29年10月19日付け文部科学省初等中等教育局通知)
平成30年 飼い主登録を徹底するための登録窓口の一元化 飼い主登録の徹底を図るため、市町村、AIPO(動物ID普及推進会)の他、任意団体等が窓口となっている飼い主登録について一元化を行うこと。 犬の登録及び狂犬病予防法(昭25法247)に基づき市区町村が行う犬の登録(同法4条)に係る窓口事務については、令和4年6月から所有者情報の登録を行う情報登録システムを活用して一元化されることとなった。
令和元年 へき地における看護職員等医療従事者の派遣が可能となる労働者派遣法の規制緩和 医師不足のため認められている、へき地等における労働者派遣法の適用除外を、不足している看護職員等医療従事者にも認め、週1、2回のスポット的な医療従事者の派遣が可能となるよう労働者派遣法の規制を緩和すること。 「労働者派遣事業の適正な運営の確保及び派遣労働者の保護等に関する法律施行令の一部を改正する政令」を令和3年2月25日に公布、令和3年4月1日より施行し、へき地の医療機関への看護師等の派遣が可能となった。
令和元年 地籍調査における筆界確認の調査手法の見直し 地籍調査における筆界確認について、遠隔地に居住する土地所有者の現地立会の負担軽減のため、筆界案の郵送や電子的媒体を利用した確認手法の多様化や、所有者不明の土地に関し、隣接土地所有者等による確認を可能とする調査手法の導入を図ること。 「土地基本法等の一部を改正する法律」(令和2年法律第12号)により、国土調査法等を改正し、地籍調査の円滑化・迅速化のための調査手続の見直しが行われた。また、地籍調査作業規程準則の一部を改正する省令(令和2年国土交通省令第62号)を令和2年6月30日付けで公布・施行し、一部の所有者が不明な場合等でも調査を進められるよう、筆界案の作成及び公告による調査手続を導入する改正が行われた。
令和2年 肉用牛肥育経営安定交付金における標準的販売価格の算出に係る食肉市場等の取引データの収集方法の合理化 肉用牛経営安定対策において、標準的販売価格の算出に用いる食肉市場等の取引データについて、都道府県を経由せずに、国または独立行政法人農畜産業振興機構が食肉市場等から直接データを収集する仕組みへの見直しを行うこと。 牛枝肉取引データの収集については、都道府県の任意の事務であることを明確化し、その旨通知した。あわせて、データの収集を希望する都道府県が当該データの収集を円滑に行えるよう、当該データの収集先に対し、協力を依頼する等が行われた。
令和2年 「地方創生推進交付金」及び「地方創生拠点整備交付金」の変更申請時期の弾力的対応 地方の創意工夫にあふれた取組を推進するため、「地方創生推進交付金」及び「地方創生拠点整備交付金」の増額を伴う変更申請時期を拡大すること。 認定地域再生計画の変更認定申請を要せず、かつ当初予期し得なかった外的要因によるやむを得ない場合について、変更(軽微以外)の申請において、新たに増額の申請機会を設ける措置が講じられた。(令和4年8月31日付け内閣府地方創生推進事務局事務連絡)。
令和3年 地域再生計画認定手続きの見直し 地方創生推進交付金の交付申請の前提となる地域再生計画の策定について、推進交付金実施計画の提出時期をずらすなど、負担の緩和を図ること。 地域再生計画並びに地方創生推進交付金の申請に係る実施計画及び地方創生拠点整備交付金の申請に係る施設整備計画の提出期限については、地方公共団体の検討期間をより一層確保するための見直しが行われた。