徳島市南蔵本遺跡出土の糸玉について
令和3年度に発掘調査を実施した南蔵本遺跡(徳島市南蔵本町1丁目2ー16)において弥生時代前期前葉の大形の穴から糸玉が出土しました。
糸玉は長さ6.2cm、幅4.5cmで、厚さ8mmです。アサ(麻)の茎から採った繊維2本を撚って、太さ約0.3mm~0.6mmの糸にしています。糸に透き漆をかけて乾燥させた後に、水銀朱を混ぜた漆を表面に塗って赤漆糸にしています。およそ30本の赤漆糸を束ねて複数回結んでいます。
糸玉は縄文時代時代早期から晩期かけて、北海道から東北地方、新潟県を中心に10数例が出土しています。これまで最も西方の出土地は奈良県御所市玉手遺跡であったことから、南蔵本遺跡の糸玉は中四国地方以西で初めての出土例となります。福島県の荒屋敷遺跡から出土した糸玉は国の重要文化財に指定されています。弥生土器を伴った事例として全国唯一で、縄文文化と弥生文化の移行期の遺跡である南蔵本遺跡を特徴づける出土品の1つと考えられます。糸玉を放射性炭素14年代測定したところ、紀元前5~6世紀と測定されています。用途は不明ですが、装飾品や装身具とする説が有力です。
現在「レキシルとくしま」で開催中の埋蔵文化財速報展「2022発掘とくしま」において実物を展示しておりますので、ぜひご覧ください。
