文字サイズ

やさしいブラウザ・クラウド版はこちらからご利用下さい

試験研究評価シート(食品苦情検査事例における迅速検査法の検討)

課題名 「食品苦情検査事例における迅速検査法の検討」

1.評価の種類:事後評価

2.担当名:製薬衛生担当

3.研究期間:平成22年度~平成23年度

4.研究費用:平成22年度(440千円)

      :平成23年度(390千円)

      :総額(830千円)

5.予算種類:県単独

必要性

 食の安全・安心への関心が高まる中,食品の苦情・相談は多く寄せられている。食品苦情への対応では,科学的かつ客観的な根拠に基づいた説明が必要とされ,検査部門には,突発的事象への迅速かつ的確な対応,(迅速な原因物質の確定,原因究明及び再発防止対策への寄与)が求められる。

 苦情のうち異臭は一定の割合を占めるが,健康被害には至らない場合が多く,分析法についての詳細な検討事例は少ない。また分析が困難等の理由で,原因が究明できない場合も多く見られる。苦情品の検査に公定法はなく,地域ごとに発生状況も異なるため,事例の少ない地研では充分な経験が蓄積されていない。地研間の連携に加え,各機関で実施可能な検査手法を検討し提示していくことに大きな意義がある。

目標

 異臭苦情時の迅速検査を目的に,少量の試料でもロスが少なく迅速に分析できる,固相マイクロ抽出法(SPME)を用いて,苦情頻度の高い消毒臭の原因物質,ハロゲン化フェノール(クロロフェノール・ブロモフェノール)を一例として,

1分析法の基礎的検討

2苦情事例への適用

を検討・評価する。

研究内容

平成22年度:少量の試料で迅速分析が可能な,固相マイクロ抽出-ガスクロマトグラフ質量分析法(SPME-GC/MS)を用いて研究手法の基礎的検討を行う。

平成23年度:全自動SPME装置搭載GC/MSを用いて各種食品での最適抽出条件の検討及び苦情食品等の分析を実施し,手動SPMEとの比較も行う。

手法

1対象食品,分析条件及び検出濃度の検討(過去の苦情事例及び他県等の事例から食品,条件等を選定)

2最適抽出条件の検討(各種食品で,各種抽出条件でのデータを採取し最適条件を決定)

3全自動SPMEと手動SPMEとの比較・検討(手動SPMEでの問題点の有無を検討)

4苦情食品及び類似の食品を用いた分析法の検証(官能検査,目的物質の検索及び定性・定量確認)

成果

1異臭苦情(消毒臭)の原因物質,クロロフェノール類及びブロモフェノール類合計10成分を,SPME-GC/MSで同時に分析する条件を得た。

2各種食品での最適抽出条件を検討した結果,苦情処理に必要と考えられる0.01ppmレベルの微量成分を効率よく検出するための知見を得た。

3SPMEは,全自動装置で省力化できるが,手動操作でも精度に問題はなかった。

4実際の苦情食品(魚すり身)及び市販食品(魚肉練り製品・魚切身)から微量のブロモフェノール類を検出し,定性・定量ができた。

以上により,本法が,異臭苦情検査(塩素臭)の迅速分析法として適用可能であると検証できた。