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試験研究評価シート(事後評価:徳島県における大気中揮発性有機化合物(VOC)濃度について)

課題名「徳島県における大気中揮発性有機化合物(VOC)濃度について」

1.評価の種類:事後評価

2.担当名:大気環境課

3.研究期間:平成20年度~平成22年度

4.予算額:

5.予算種類:県単独

必要性

 平成13年のPRTR制度導入により有害化学物質の排出量についてデータが集計・公開されるようになった。また平成18年には揮発性有機化合物(VOC)の排出規制が開始し、有害化学物質であるVOCの排出についての把握・管理が促進されてきた。一方、排出されたVOCの徳島県内での環境実態については把握されておらず、地域によって事業所規模や人口・気象・地理的要因等が異なることから、健康及び環境保全のためには地域の実情に応じた実態把握及び初期リスク評価が必要であると考えられる。

目 標

 PRTRデータによると県内で排出される化学物質の大部分がVOCとされ、その大半は推計値に基づく届出外排出であるために、県内の環境実態については不明な点が多い。そこで県内のPRTR排出量上位物質を中心に健康影響が懸念されるVOCについて環境実態を把握するとともに、公開されている大気拡散モデルを利用して大気中推定濃度の算出を検討する。そして地域特性に応じた大気軽油の曝露による人への影響を評価する手法を検討し、今後の環境保全施策に資する。

研究内容

1.県内のVOC濃度についてモニタリング調査を実施し、各地点の環境特性を把握した。また、経年変化からVOC排出規制の効果について検証した。

2.VOCの実測濃度からヒト健康への初期リスク評価を行った。

3.PRTR排出量を基に大気拡散モデルにより推定濃度を算出し、実測濃度との相関性から推定濃度の妥当性を検証した。

4.費用等の面からモニタリング調査が困難な地域についても、大気拡散モデルを利用して推定濃度を算出し初期リスク評価する方法を検討した。

手 法

1.県内のVOC濃度のモニタリング調査:県内4地点で月1回24時間、キャニスターに大気を捕集し、大気試料濃縮装置付GC/MSにより分析した。

2.初期リスク評価:実測濃度からガン過剰発生率あるいは曝露マージンを算出し、初期リスク評価を行った。

3.大気拡散モデルを利用した濃度の推定及び検証:公開されている大気拡散モデルを用いて、PRTRデータを基に県内各地点の推定濃度を算出し、実測データと比較し検証した。

4.地域別初期リスク評価:1,2-ジクロロエタンについて24市町村別推定濃度を算出し、地域別初期リスク評価を行った。

成 果

1.県内のVOC濃度のモニタリング調査により、県内各地点で特色のある濃度を示すことが明らかになった。また、VOCの全体濃度は各地点とも減少傾向にあり、VOC排出規制の効果が示唆された。

2.県内のVOC濃度について初期リスク評価を行ったところ、全物質においてリスクは懸念されず、現状の維持管理が重要であることが示された。

3.大気拡散モデルにより推定濃度の算出ができた。届出外排出量の多い物質でが補完式により精度良く推定濃度の算出が可能なことが示唆された。

4.実測では困難な多地点における濃度の推定により、地域別初期リスク評価および原因調査等が可能であることを示した。

その他

中石明希,他:徳島県における有害大気汚染物質調査,徳島県保健環境センター年報28号,23-26(2009)