〒770-8570
徳島県徳島市万代町1丁目1番地
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春が近づくと水が温み、魚たちが活発に動き始めます。マダイなどの多くの魚は産卵をひかえて、脂がのって美味しくなります。また、夏が旬の魚は栄養価が高く、夏バテ防止にも役立ちます。
豊かな海に恵まれた徳島県では、たくさんの漁港があり、四季を通していろいろな種類の魚が水揚げされます。漁師さんの家では、どのような魚料理が食卓に上るのでしょうか。
「食材を生かして手間をかけず」。県内の各漁協のおかみさんが教えてくれた料理はどれも簡単で美味しいものばかり。以下を参考にさっそく挑戦してみましょう。
豪快な鯛料理
「播磨灘では多くの魚種が捕れるんです」と語ってくれたのは北灘漁協の延原さん。鳴門市北灘町の粟田漁港では一年を通してたくさんの種類の魚が水揚げされています。
とりわけ有名なのが定置網で捕れる「鳴門鯛」です。「鳴門海峡で育った鯛の中には、激しい潮の流れの中で泳ぐために骨にコブを持つものがおるんですわ。
マダイの皮霜造り
鯛は用途が広い魚で、姿造りから旨味を十分引き出した鯛飯、頭はかぶと煮、内臓は煮付けや汁物にと、捨てるところがない魚です。延原さんに、地元ならではの豪快なタイ料理「マダイの皮霜造り」、「蒸し鯛」を教えていただきました。
食卓で大活躍の大衆魚
「アジは一番よく食べるなじみがある魚」と北泊漁協婦人部の谷井さんは言います。塩焼きや煮物、たたきやフライと食卓で大活躍です。初夏に出回る小アジも美味しいもの。唐揚げや南蛮漬けにすると丸ごと食べられます。
マアジの姿寿司
とりわけ酢との相性が良く、スダチを添えた「アジの姿寿司」は、徳島の夏祭りの味として欠かせません。
涼やかな夏魚
天ぷらの素材として欠かせないキス。上品な白身で酢の物や昆布締め、ピカタなど幅広く活用できます。鳴門市北泊の地元では、獲れたての新鮮なものよく刺身にするそうです。今回は三枚におろして結んだ身を使った上品な椀物とポピュラーな天ぷらを紹介します。
漁家に代々受け継がれてきた味
紀伊水道に面した小松島漁協ではクルマエビ、アシアカエビ、シラサエビなど、エビ類が多く漁獲されます。地元で捕れる新鮮な小エビを使った「小エビのそぼろ寿司」は、小松島の郷土料理です。
小エビのそぼろ寿司
材料となるのは、地元で「サルボエビ」と呼ばれる小エビで表面がひときわ赤い色をしているのが特徴。そぼろにしたとき、きれいなピンク色になります。祇園祭の時には、漁家に欠かせない味として母から娘へ、義母から嫁へと代々受け継がれてきました。昔はお祭りが来ると重箱にたくさん詰めて親戚や近所の人に配ったそうです。少々手間がかかりますが新鮮な小エビを手に入れたら是非挑戦してください。ほんのりと甘くてやさしい味です。
焼き切りに挑戦
イサキは、徳島県南部では6〜9月に旬を迎えて美味しくなります。身は白身で淡泊ですが弾力性に富み、中骨などのアラには濃厚な脂がのっています。おすすめ料理を牟岐町漁協婦人部の皆さんに伺いました。
「十分に大きくなったものなら、刺身か焼き切りですね。あと、アラと豆腐の煮付け。小さいものは唐揚げが一番。」
また、焼き切りにして残ったアラは豆腐と一緒に甘辛く煮付けます。こってりとしたアラの脂の旨味が豆腐にしみて、食欲を誘います。
「小振りのものは、よく揚げれば骨まで食べられますよ(同婦人部の皆さん)。」ご飯のおかず、お酒の肴にと重宝です。
イサキの焼き切り(焼き霜造り)
焼き切り(焼き霜造り)は、刺身で飽き足りない方にはおすすめ。手軽に出来て香ばしく上品な一品となります。
チリメン独自のだしを生かす
太陽の光をいっぱいに浴びたチリメンは小さな体の中にたっぷりの滋味が凝縮しています。天日で乾燥させた「上乾物」はチリメンの代表格。日持ちも良く、噛めば噛むほど旨味が口の中に広がります。
料理法や好みに合わせてチリメンのタイプも選ぶことができます。例えば、漁獲したイワシの稚魚(シラス)を素早くボイルした「釜揚げ」は柔らかい食感が魅力。子どもからお年寄りまで幅広く食されています。
「チリメンは独特の上品なだしが出るから、どんな料理にも合うんよ」と話すのは、和田島漁協の婦人部の皆さん。チリメンチャーハンをはじめ、厚焼きたまごに入れたり、お好み焼きに入れたりとアイデア次第で調理法は無限に広がります。少し日が経って固くなったものでも佃煮などにすれば十分美味しくいただけます。また、和田島には捕れたての生のシラスを使った料理法もあります。なかでもお吸い物や天ぷらなどがおいしいそうで、ホクホクとした歯触りは絶品だとか。生のシラスは傷みやすく、入手方法は限定されていますが、是非一度味わってみたいものです。
あなどれない味わい
カサゴは沿岸や沖の海底などの岩礁に好んで住み着いていることから、釣りの対象としてもポピュラーな魚です。徳島ではガガネとも言い、地域によってガシラ、赤メバルなどとも呼ばれ親しまれています。
カサゴの唐揚げ
ゴツゴツした感じでエラの張った姿はグロテスクですが、身は淡泊で煮付けや唐揚げなどにすると、じわじわと味わい深い魚です。
小さなアワビ
トコブシはアワビによく似た味と形をし、牟岐町など地元では流子「ナガレコ」とも呼ばれています。大きさはせいぜい長径約7cm程度で水深10mより浅い岩の下などにくっついています。「昔からこの辺りでは、毎年4月3日を浜節句と言って、家族や友人など、みんなで浜に出かけて祝っています。その時に持っていくお弁当は必ず、トコブシの煮付けを入れていくんですよ。お正月のおせち料理みたいなものです」と、牟岐東漁協の生活部会の皆さん。
トコブシ丼
このトコブシを、鶏肉の代わりに使って親子丼風にアレンジしたのが、トコブシ丼です。アワビの歯ごたえを残しながら、柔らかく煮込まれたトコブシが、口の中でプリプリはぜるのが、こたえられません。
型の大きなものは刺身やステーキにして食べられているそうです。
自然の塩加減が絶妙
「自然の塩加減が効いているので味付けしなくてもいいんですよ。味噌汁の具や天ぷらにも便利」(牟岐東漁協の生活部会の皆さん)。フノリは塩に洗われる岩に付着して繁殖する海藻で、長さ10cmくらいに生長します。それを手で採取するのですが、ゴミが混じらないように注意を払わなければならない手間のかかる食材です。