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〔治山〕 とくしまの地すべりの特徴

徳島県の地質

1 とくしまの地すべりの概要

 本県は、ほとんど全県下にわたって地すべり指定区域が認められる。これは、東西性の次元の高い断層破砕帯が通っていることが1つの大きな原因となっているが、規模の大きさ、継続性という観点から見た場合、真の地すべりが見られるのは、三波川帯および、みかぶ帯のみと言ってよい。他の帯では多くの場合、崩壊または崖錐の落下によるものが大部分で、これらについてはいずれも豪雨、または長雨の誘因が大きい。しかし、三波川帯・みかぶ帯の場合には、長雨、豪雨の誘因にあまり左右されず、継続的にすべっている場合が多い。

 和泉帯では、崩壊が多いのは断層に近接した地域、あるいは流れ盤となって谷に層面が傾斜している所などが多く、特に阿讃山麓部では、中央構造線に平行または斜交する断層による崩壊が著しい。これは過去においても甚だしかったため、新規扇状地堆積物、沖積扇状地堆積物の一部は、この土石流によってもたらされたものと言えよう。

 秩父帯では、中帯に崩壊が集中している。これは、坂州衝上、十二社衛上の二本の断層が大きな影響を左右していること、および古生層・中世層の間に存在する断層もその影響を及ぼしたのであろう。

 四万十帯においては、ほとんど指定地域が見られないが、それでも、椿ー星越断層、深瀬ー伊座利断層に沿って崩壊が見られ、県の南端でも同様に断層に沿うものが見られる。

2 三波川帯・みかぶ帯の地すべり

 三波川帯・みかぶ帯では、断層運動によって岩盤が破砕され、地すべりを起こしている。したがって地すべり地の分布と地質構造との間に密接な関係がある。しかも、点紋帯、無点紋帯、みかぶ帯でそれぞれ地すべりの様式、地すべり地の特徴が違っている。このことは、これらの三帯がそれぞれ独特の特徴ある地質構造であることからきている。各帯における地すべり地の特徴は、地すべり地の土地利用と関係して重要である。

(1)点紋帯の地すべり

 この帯の岩石は、変成度が高いので再結晶の程度が良好で、岩石は葉片状に別離する性質が弱く、ときに塊状である。地層は一般に急傾斜で、走向方向に断層が発達していることも少ない。ただし、点紋帯の岩石は風化に対する抵抗が無点紋帯の岩石より弱く、地表に近い岩石は風化されて土状となっている。したがって崩壊性またはクリープ性の動きを示す小規模な地すべりがある。徳島市の眉山、吉野川市鴨島町の飯尾南方六防、吉野川市美郷村の品野などの地すべりは断層破砕帯にともなうものであるが、一般には、点紋帯に地すべり地は少ない。

(2)無点紋帯の地すべり

 この帯の岩石は、葉片状に剥離する性質があり、とくに泥質片岩の場合には、細かな摺曲構造の摺曲軸面に沿って割れ目が発達している。この摺曲軸面による割れ目は、ときにかなりの幅をもった断層破砕帯となっている。このような地層と地すべり地の分布との関係は、祖谷川流域の地すべりと地質構造との関係を見ると明瞭である。無点紋帯地すべり地の岩盤は主として泥質片岩であり、そこを断層破砕帯が通る場合、鱗片状に破砕されて砂質の粘着性のない崩積土を生じている。崩積土が透水性のため、一般に水は少なく、地すべり粘土の形成も少ない。地すべり運動は局地的に不規則で、同じ地域の中でも特に動きの激しい部分と、全く動かない部分とが混在している。

(3)みかぶ帯の地すべり

 この帯の地すべりは、日本列島という規模での大きな断層(みかぶ線)に沿って発生している。徳島県では、みかぶ線は、みかぶ型緑色岩類(塩基性片岩)と、その北側の三波川帯の泥質片岩との間の断層で、徳島市八多町北方から佐那河内村井開を通り、府能の峠を越して神山町に入り、鮎喰川上流に向かって寄井から府殿、川井峠南方を超えて旧木屋平村谷口に抜けている。旧木屋平村から西へ太合の谷を通って保賀山峠南方から旧一宇村桑平に抜け、さらに旧東祖谷山村の菅生から古味南を通って高知県に抜ける。この間、断層破砕帯は明瞭で、泥質片岩とみかぶ型緑色岩類が接する部分で、両方の岩石が幅100m以上破砕されている。断層が大規模なものであるので、地すべり粘土を大量に生じ、地すべり運動も広汎で、湧水が多く、しかもほぼ均一に地域全体が動いている。湧水量も多い。特にみかぶ型緑色岩類が破砕されてその上に生じている地すべり地では、崩積土が粘土質であるため透水性が悪く、地下水は岩盤と崩積土の境界から湧出するか、あるいは崩積土下を流れるようになる。時として急激でしかも大きな動きを示すので、この帯の地すべりが最も危険である。

 以上の徳島県における三波川・みかぶ帯の地すべりの特徴をまとめると、次のようになる。