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四国山地のカモシカについて

カモシカについて

 カモシカ(ニホンカモシカ)は日本の固有種で、ニホンジカ(シカ科)とは異なりウシ科の動物です。ニホンジカは群れで行動しますが、カモシカは通常、単独で行動し、縄張りを作ることが知られています。

 昔から、カモシカは良質な毛皮や肉がとれることから狩猟対象であったため個体数が減少し、捕獲禁止の措置がとられたものの、密猟等により減少の一途を辿りました。そのため、1955年(昭和30年)、国の特別天然記念物に指定されました。

四国山地のカモシカの現状について

 四国山地のカモシカは文化庁の報告書によると、昭和20年代までは剣山東部・海部山地の奥地を中心に生息していましたが、昭和63年度・平成元年度の2年にわたる調査(第1回四国山地カモシカ特別調査)以降、低標高域への生息地拡大が著しく、平成27年度は南阿波サンラインや三好市の市街地(休耕田)に出現する等、生息地の分散化や低標高化が顕著になってきています。

 これらの主な原因は、植林の減少に伴う低木やササ等のカモシカが好む生息環境の悪化や、近年、高標高域でもニホンジカが急増したことにより、生息環境の類似したカモシカが追われる形で低標高域へ分散していったことがあげられます。特に、剣山・三嶺では、ニホンジカによる食害被害が目立ちます。

 また、平成27年9月には、環境省のレッドリストに「絶滅のおそれのある地域個体群」に四国山地のカモシカが選定される等、生息密度の著しい減少は深刻な問題となっています。

 徳島県では、特別天然記念物であるカモシカを保護するため、そして、カモシカの住みかである森林を守るため、5~7年に一度、高知県教育委員会との2年間の合同調査(専門調査機関による特別調査)を行っています。また、合同調査以外に、地元のカモシカ調査員によるカモシカの糞塊や目撃情報について調べる調査(通常調査)も行っています。

 県民の皆様方のカモシカの目撃情報がカモシカの生息状況を把握する上で貴重なデータとなりますので、発見場所や日時、個体の情報などを発見した場所の所在する市町村の文化財保護行政担当課へご連絡ください。(各市町村から報告を受け当課で目撃情報等を取りまとめています。)

四国山地カモシカ特別調査について

 徳島県では、平成30・令和元年度の2年間にわたり、高知県教育委員会と合同で、四国山地カモシカ特別調査事業を実施しました。その調査とカモシカについて知ってもらう目的のパンフレット「特別天然記念物四国山地のカモシカ」を作成し、調査地域と周辺の小学校・中学校・農業協同組合・林業組合等に配布いたしました。

 特別調査の結果、以下のことがわかりました。

1.カモシカの食べ物である森の低い木やササなどの草が大幅に減っていること

2.植林されたスギやヒノキが大きく育ち、暗い森となって、調査地域の7割近くが、ササ等の少ない森になっていること

3.近年、激増しているシカが食べつくしていること

4.カモシカの分布が、中心部では減り、周囲の広い範囲へひろがっていること

5.事故等で死んだカモシカの胃の中の食べ物とシカの胃の中の食べ物を比較したところ、カモシカはヒノキ・スギの皮をはいで食べることはないこと

 なお、四国山地に生息するカモシカの頭数は、得られる情報の量や計算方法によって増減しますが、過去の調査もおしなべて見ると、おおよそ千数百頭であると考えられます。今回の調査結果をもとに、今後の四国山地のカモシカ保護管理対策等に役立てたいと考えております。

カモシカの錯誤捕獲について

 カモシカが、急増したニホンジカに追われる形で低標高域へ分散し、人里近くまで生息域が広がったことで、イノシシやニホンジカ等の獣害対策で設置した罠(くくり罠)にカモシカが誤ってかかてしまう(錯誤捕獲)事例が近年増えています。

 カモシカの錯誤捕獲が生じた場合、罠の設置者にはカモシカの速やかな放獣が求められますが、設置者等関係者の身の安全確保や「特別天然記念物カモシカ」への影響の観点から慎重な対応が必要です。カモシカの錯誤捕獲を発見した場合、発見した場所の所在する市町村の文化財保護行政担当課へ連絡をお願いします。徳島県としてもカモシカの錯誤捕獲の防止と速やかな放獣の推進を図って参りたいと考えますので、ご協力お願いいたします。

カモシカ
錯誤捕獲されたカモシカ
かもしか
くくり罠により左前足を負傷したカモシカ