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所有者不明土地の解消に向けて(令和6年4月1日から相続登記の申請が義務化されました)

1 所有者不明土地とは

 「所有者不明土地」とは、不動産登記簿などの公的記録に基づいても所有者が直ちに判明しない、又は所有者が判明しても連絡が取れない土地のことをいいます。(広義の所有者不明土地)

2 所有者不明土地の背景と現状

 人口減少・高齢化・都市部への人口集中が進む中、特に地方では、土地の利用ニーズが低下し、土地に対する所有意識も希薄になる傾向があります。その結果、相続登記が行われずに放置されるケースが増え、所有者が不明のまま長期間管理されない土地が増加しています。このままでは、相続機会の増加に伴って、所有者不明土地も増加し続けることが予想されています。

3 所有者不明土地の問題点

 相続登記が行われないと不動産登記簿の情報が実態と合わなくなり、真の所有者を特定するために多大な時間と費用がかかり、場合によっては特定が不可能となります。また、遺産分割がされないまま相続が繰り返されると所有者の数が急増し、公共事業や今後30年以内に80%程度の確立で発生が予測される「南海トラフ地震」などの大規模災害からの復旧・復興事業の妨げの原因となります。また、長期間放置された所有者不明の土地は管理不全状態となり、雑草の繁茂やゴミの不法投棄などが発生し、地域住民の生活環境を著しく悪化させる恐れがあります。

【所有者不明土地の主なパターン】

  • 登記簿に記載された内容が古く、所有者を特定することが困難な土地
  • 土地所有者は特定できても、その所有者の所在(転出先や転居先)が分からない土地
  • 多数の共有者がいる土地で、共有者の全員を特定することが困難な土地
所有者不明土地
(出典:自由民主党HP)

4 所有者不明土地に関する法整備の概要

 所有者不明土地の利用の円滑化を図ることを目的とした「所有者不明土地の利用の円滑化等に関する特別措置法」が平成30年6月6日に成立し、令和元年6月1日の全面施行を経て、施行後3年経過した令和4年11月1日には、一部が見直し改正されました。特措法では、(1)所有者不明土地を円滑に利用する仕組み、(2)所有者の探索を合理化する仕組み、(3)所有者不明土地を適切に管理する仕組みを構築しています。

【主な制度内容】

●公共事業の収用手続きの円滑化
土地収用法に基づく認定を受けた事業において、起業地内の特定所有者不明土地については、収用委員会に代わって知事が収用裁定を行うことで手続きの簡素化・迅速化が実現されました。 「特定所有者不明土地」・・・現に建築物がなく、業務の用その他の特別の用途に供されていない土地
●地域福利増進事業の創設
特定所有者不明土地を、公園、道路、病院、学校などの地域の福祉や公共の目的に活用できる制度。知事の裁定により使用権(最長20年間)が設定され、地方自治体、NPO法人、企業、自治会など多様な主体が事業を行うことが可能となりました。対象となる施設は、段階的に拡大され、令和4年11月改正では備蓄倉庫や再生可能エネルギー発電設備などが追加されました。
●所有者探索の合理化
ア 土地等権利者関連情報の利用及び提供 土地の所有者の探索のために必要な公的情報(固定資産課税台帳、地籍調査票等)について、行政機関が内部利用できる制度を創設。 イ 長期相続登記等未了土地に係る不動産登記法の特例 長期間、相続登記等がされていない土地について、登記官が、長期相続登記等未了土地である旨等を登記簿に記録することができる制度を創設。
●所有者不明土地管理制度の整備~人単位から不動産単位へ~(民法の特例)
これまで土地の管理が必要な状態となっているにもかかわらず、管理をする方法が無かった所有者不明土地についても、令和5年4月から利害関係人が家庭裁判所に財産管理人の選任を申し立てることで、適切な土地管理が可能となりました。

5 民事基本法制の見直し(令和3年法改正)

【発生予防のための主な改正点】

●相続登記の申請義務化(令和6年4月1日施行)
相続により不動産を取得した相続人は、所有権を取得したことを知った日から3年以内に相続登記の申請をしなければなりません。令和6年4月1日より前に相続した相続未登記の不動産も申請義務の対象となり、令和9年3月31日までに相続登記をする必要があります。また、遺産分割で不動産を取得した場合も、別途、遺産分割から3年以内に、遺産分割の内容に応じた登記をする必要があります。遺産分割がまとまらない場合には、自分が相続人であることを法務局の登記官に申し出て相続登記の申請義務を果たすことができる「相続人申告登記」の制度を利用できます。なお、正当な理由がないのに申請をしなかった場合には、10万円以下の過料の適用対象となります。
●住所・氏名変更登記の義務化(令和8年4月1日施行)
登記簿上の不動産の所有者は、所有者の氏名や住所を変更した日から2年以内に住所等の変更登記の申請を行う必要があります。なお、正当な理由がないのに申請をしなかった場合には、5万円以下の過料の適用対象となります。
●相続土地国庫帰属制度(令和5年4月27日施行)
相続等によって土地の所有権を取得した相続人が、今後その土地を利用する予定がない場合、法務大臣の承認により、土地を手放して国庫に帰属させることを可能とする制度。
・申請できる人
相続や遺贈によって土地の所有権を取得した相続人(過去相続も可)
・申請できる土地
通常の管理又は処分をするに当たって過大な費用や労力が必要となる土地以外 (申請できない例:建物等がある土地、境界が明らかでない土地、担保権等の権利が設定されている土地など)
・要件審査
申請後、法務局による書面審査や実地検査
・費用負担
申請時の審査手数料(土地1筆につき14,000円)、帰属承認時の負担金(10年分の土地管理費相当額)

関連リンク・資料(外部サイト)

所有者不明土地に関して、ご不明な点がありましたら次の問い合わせ先にご相談ください。