木屋平診療所は、剣山の北側に広がる山間へき地にあります。旧木屋平村が設立した地域唯一の医療機関で、常勤医一名の無床診療所です。私は2003年に初めて赴任し、日々の診療や生活の場で顔を合わせる地域の方々とは互いに20数年のお付き合いになっています。多くの出会いと、もっと多くの別れがありました。医療がお役に立てて嬉しかったこともあり、トシには勝てないという言葉を思い浮かべるしかないこともありだったかなと思います。
特にこの数年は、縮小していく地域に応じた工夫が必要になっていることを実感しています。今までと少し違ってきたなと思っているうちに、存在することが当たり前のように思い込んでいた様々なサービスの存続が厳しくなっていたり、ともに地域医療を支えてきた多職種のメンバーが少しずつ欠けていったりなど、人口減少や少子高齢化といった地域社会の状況が地域医療に大きく影響していくのを目の当たりにしています。
木屋平は、市役所本庁まで車で1時間近く、市外の地域と行き来するには更に時間がかかるという地理的な条件があります。このため、地域内の医療介護には一定レベルの自己完結が求められ、その動向が地域の方々に与える影響は比較的大きいと感じます。地域の状況に応じ、今後どのように工夫していけるかだと思います。個人的に、地域のいろいろなフェーズを現地で過ごしたいと考えて現場に残ってきたところもあります。これから先も、これまで通り仲間と楽しく語り合い、あれこれ手がけていくことができればと思います。
当地に実習や研修に来られる方々には、そうした地域あるいは自らの文脈も加味して現場の楽しさをお伝えすることができればいいなと考えています。
徳島県では徳島大学と連携し、地域医療を担う医師のキャリア形成支援と本県の医師不足の状況等を把握・分析し、医師の地域偏在の解消や医師確保の支援等を行うことを目的として「徳島県地域医療支援センター」を設置しております。
当センターでは、キャリア形成支援に係る相談窓口を設置していますので、お気軽にご相談ください。
→徳島県地域医療支援センターHP
県では、「徳島県医療勤務環境改善支援センター」を設置し、医療労務管理アドバイザーや医業経営アドバイザーと連携しながら、県内の医療機関における勤務環境改善の取組を総合的に支援しています。
→徳島県医療勤務環境改善支援センターHP
徳島県では、例年、地域医療を担う医師確保対策の一環として、将来医学部への進学を志望している高校生を対象に、地域医療の実態を直接体感していただく「高校生地域医療現場体験ツアー」を実施しています。
今年度の実施につきましては以下のとおりとなっております。
【日時】
令和7年8月8日(金)10:00~17:00
【訪問先】
(1)県立中央病院-国民健康保険木屋平診療所ルート
(2)徳島赤十字病院ー国民健康保険上勝町診療所ルート
※申込数等により御希望に添えない場合があります。
【対象】
県内の医学部志望の高校生(1~3年生)
【募集人数】
80名程度
※応募者多数の場合は、申込理由などを参考に、県が参加者を選考します。
参加の可否については、学校を通じてお知らせします。
【申込期間・申込方法】
令和7年5月末頃(予定)~6月18日(水)
※募集開始日につきましては、学校を通じてお知らせいたします。
参加希望者本人が電子申請サービス (下記 URL) からお申込みください。
https://apply.e-tumo.jp/pref-tokushima-u/offer/offerListdetail?tempSeq=14269
【参加費】
無料
※県庁から訪問先までの交通費及び傷害保険は県が負担します。
徳島県では、地域医療を担う医師の養成・確保対策の一環として、平成18年度から、本県の地域医療を直接体感してもらうための「夏期地域医療研修」を実施しています。本研修は、「自治医科大学の本県出身者」及び「全国の医学生」が対象であり、県内3カ所で2泊3日の実践的な研修を行います。
今年度は自然豊かな山間の町「那賀町」と「三好市」、海辺の町「牟岐町」等にある医療機関で、外来診療や訪問診療、地域との交流等の研修を行う予定です。また、最終日には、研修成果を発表する全体報告会も開催する予定です。
詳細につきましては、以下のとおりとなっております。
【日程】
令和7年8月21日(木)~23日(土)
【研修場所】
(1)那賀町「町立上那賀病院」、「国民健康保険日野谷診療所」 等
(2)三好市「県立三好病院」、「国民健康保険西祖谷山村診療所」 等
(3)牟岐町「県立海部病院」 等
※研修地によって、研修内容が異なる場合があります。
※研修地については、皆様のご希望を確認した上で県が決定しますが、定員等によりご希望に添えない場合がございます。
【対象】
全国の国公私立大学の医学生(1~6年生)
※出身地は問いません。
※自治医科大学の本県出身者との合同研修です。
※参加者は、全日程に参加できる方に限ります。
【募集人数】
30名程度
※先着順です。定員になり次第、募集を締め切ります。
【申込期間】
令和7年5月末頃(予定)~令和7年6月18日(水)
※締切までに定員に達した場合、その時点で募集を締め切ります。
【参 加 費】
無料
※ただし、研修中の食費等は自己負担です。
※県庁から研修地までの交通費、宿泊費及び傷害保険は県が負担します。
徳島県では、県内における臨床研修医等の確保に向け、新たに「一時金支援制度」を創設しており、令和7年度より支援対象を拡大する運びとなりました。
詳しくは、以下の内容をご確認ください。
令和7年度の一時金支援制度の支援対象拡大等の詳細につきましては、以下の通り事前告知させていただきます。
支給対象者:出身地や出身大学を問わず、県内で研修を行う「すべての医師(徳島大学医学部地域特別枠や自治医科大学卒業医師等を除く)」へ支援対象を拡大。
支給額: 初期臨床研修:100万円※臨床研修プログラムを修了することが条件
(臨床研修医一時金を受けた者がR9年度以降、県内の病院で専門研修プログラムを開始する場合、200万円の支給を予定)
募集人数:60名(R8年度から県内の医療機関で初期臨床研修を行う者)
募集時期:未定
徳島県内、特に県南部の病院は防災に力を入れている。徳島大学常三島キャンパスの環境防災研究センター(蒋景彩(じゃん・じんさい)センター長)は、地域の防災と自然環境保全、危機管理などについての研究を推進している。2018年4月から毎月原則第4木曜の18時から20時に「とくしま大学環境防災カフェ」という講演会を開催しており、オンラインで視聴できる。2025年度も4月24日(木)に第一回カフェが開催され、聴講したので紹介する。
まず、「最新の動向を踏まえた南海トラフ地震への備え」と題し、中野晋名誉教授が解説された。今後30年に80%程度の確率で起こる南海トラフ地震の最近の国の発表を解説した。また、昨年元日に発生した能登半島地震(M7.6)についても言及。南海トラフ地震では、震度6強から7の揺れや、液状化と津波浸水が起こる。道路や橋が通れなくなり、ライフライン(水道・電気・通信・トイレ)が長期に使用できないとして備蓄が必要と(アーカイブ配信が視聴できる)。
次に、「令和6年能登半島地震での医療機関の対応と課題」と題して、湯浅恭史先生(環境防災研究センター)が講演された。実際に視察した3病院を紹介された。1)国立病院機構七尾病院:被害や資源制約を受けながらも医療を制限し継続。2)穴水総合病院:転院や支援などにより業務負担を減らしつつも医療を継続。3)市立輪島病院:医療継続だけでなく福祉ニーズに対応して介護医療院を開設。中野先生もはなされたが、住環境や生業環境(なりわい)の回復が遅れることで、過疎化が一気に進むことになるとのこと。震災を機に事業を縮小するか、震災前の事業を再建するのかの判断が求められる。
第2回は 5月22日(木)に、1)「南海トラフ地震の被害想定の見直しについて」(社会産業理工学研究部の馬場俊孝教授)、2)「徳島市災害避難支援マップの作成15年の歩み~市民の認知度と理解度,今後の改善について~ 」(同研究部の田村隆雄先生)の二つの講演が予定されている。地域医療においても、この防災カフェは参考になる。
☆徳島大学 環境防災研究センター
⇒https://www.tokushima-u.ac.jp/rcmode/
☆環境防災カフェ(申し込み方法も)
⇒https://www.tokushima-u.ac.jp/rcmode/business/kankyobosai-cafe.html
御寄稿いただいた先生方をはじめ、日頃から県の医療行政を御支援いただいている皆様に心より感謝申し上げます。
それでは、以上をもちまして「とくしま医師バンク通信」第204号を終わらせていただきます。向暑の折柄、ご自愛くださいませ。
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次回の「とくしま医師バンク通信」第205号は、令和7年6月18日(水)の発行予定です。
アドレスの変更・配信停止はこちら
https://www.pref.tokushima.lg.jp/dr-bank/mailmaga
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