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とくしま医師バンク通信 Vol.201(2月号)

目次

  1. 生活と水 徳島県阿南保健所長兼美波保健所長 郡尋香
  2. トピックス
  3. 医師情報箱
  4. 神経難病や認知症を当事者より学ぶ 美波町国民健康保険美波病院 院長 本田壮一
  5. 編集後記

1.生活と水

徳島県阿南保健所長兼美波保健所長 郡尋香

 阿南保健所・美波保健所の郡です。「生活と水」という動画をご存じでしょうか?旧厚生省後援で1952年に水道の啓発目的で作られ、2023年8月にアーカイブで公開されました。水道のない非衛生的で不便な生活と、水道整備後の快適な生活の対比を見て、親世代の幼少期はこんなに大変だったのかと衝撃を受けました。

 水道については、能登半島地震でも断水長期化で飲料水や生活用水が十分に確保できず、被災者をさらに苦しめました。また、ここ数年は国内での有機フッ素化合物(PFAS)検出も問題視されています。

 日常生活で意識するのは節約や水道代ですが、水道事業は市町村が担い、都道府県は給水人口5万人以下の水道事業に関する許認可権限を持ちます。保健所でも、市町村からの水質検査報告を毎月受けています。なお、国における水道対策は2024年4月に厚労省から国交省と環境省(水質部分)に移管されました。国交省は旧建設省時代の1957年から下水道を管轄し、67年ぶりの機構改革によって上下水道を一元的に担うことになりました。

 断水以外で医療従事者がイメージしやすいのは、水系感染症でしょうか。日本でも上下水道が整備されるまでは、コレラ・赤痢・腸チフスなどが広く流行していたことが多くの書籍に残されています。海外には現在も流行地域がありますので、旅行者下痢症の診療ではご注意いただき、三類感染症の場合は管轄保健所への届出もお願いします。

 「生活と水」を制作したのは岩波映画製作所で、見応えがあります。ぜひご覧になり、各地の水道資料館に足を運んではいかがでしょうか。また、ご所属・ご家庭の両方で、災害用の飲料水・簡易トイレの備蓄について、改めての確認や補充をお願いいたします。

【NPO法人科学映像館「生活と水」】
https://www.youtube.com/watch?v=ELHm9_FZNmk&feature=youtu.be

2.トピックス

医師のキャリア形成に関する相談窓口

 徳島県では徳島大学と連携し、地域医療を担う医師のキャリア形成支援と本県の医師不足の状況等を把握・分析し、医師の地域偏在の解消や医師確保の支援等を行うことを目的として「徳島県地域医療支援センター」を設置しております。

 当センターでは、キャリア形成支援に係る相談窓口を設置していますので、お気軽にご相談ください。

 →徳島県地域医療支援センターHP

 http://www.t-cm.jp

医療勤務環境改善支援センター

 県では、「徳島県医療勤務環境改善支援センター」を設置し、医療労務管理アドバイザーや医業経営アドバイザーと連携し、県内の医療機関における勤務環境改善の取組を総合的に支援しています。

 →徳島県医療勤務環境改善支援センターHP

 /med/categoryMedical/sonota/houjin/7233491
 

3.医師情報箱

臨床研修医等の確保に向けた「一時金支援制度」の創設について

 徳島県では、県内における臨床研修医等の確保に向け、新たに「一時金支援制度」を創設しました。

 詳しくは、以下のURLのリンクから、内容のご確認をよろしくお願いいたします。

支給対象者:徳島大学医学部に在籍する「徳島県外出身」の方で、「県内の臨床研修プログラム」で初期臨床研修を行う方

支給額: 100万円 ※臨床研修プログラムを修了することが条件

募集人数(令和6年度):15名(R7年度から県内の医療機関で初期臨床研修を行う者)

募集時期:令和6年11月11日(月)から令和7年2月28日(金)まで(募集期間延長!)

詳しくは、下記URLからご確認ください。

https://www.pref.tokushima.lg.jp/med/categoryMedical/sonota/kikan/7245175/

【事前告知】徳島県医師修学資金貸与事業(県外大学医学部進学者向け)について

 令和7年度に県外大学医学部に進学する方を対象とした「徳島県医師修学資金貸与事業(県外大学医学部進学者向け)」を実施しますので事前にお知らせします。なお、募集期間、応募方法等の詳細については、3月を目途に「医療とくしま」ホームページで公開する予定です。

1 応募要件
次の2つの条件を満たす必要があります。
(1)令和7年3月31日までに徳島県内の高等学校又は中等教育学校を卒業した者で、令和7年4月から徳島県外の大学の医学部に進学する予定の者。
(2)将来、徳島県内の公的医療機関等において、医師として勤務しようとする意志のある者。

2 貸与額
(1)入学金(1年生のみ) 282,000円
(2)授業料 535,800円/年
(3)奨学金(生活費) 100,000円/月

4.神経難病や認知症を当事者より学ぶ

美波町国民健康保険美波病院 院長 本田壮一

 映像は、文章や講演より理解しやすい。二つのドキュメンタリー映画を視聴する機会があったので、紹介する。
(1)筋萎縮性側索硬化症(ALS)

 ALSは、脳・脊髄の運動ニューロンが進行性に変性・消失していく原因不明の疾患である(指定難病2)。「難病医療講習会2」が、2025年1月26日(日)に大塚講堂(徳島大学蔵本キャンパス)にて開催された。

 まず、和泉唯信教授(徳島大学)によるALSの新薬(ロゼバラミン筋注)の1990年頃からの研究成果のご講演があった。恩師の亀山正邦先生(住友病院、1924?2013)の「生活とは徹することだ(高風萬里)」という言葉に刺激を受けた。

 次に、舞台挨拶と映画“NO LIMIT, YOUR LIFE”(2023)の上映。武藤将胤(まさたね)さん(1986~)と毛利哲也監督、和泉先生が登壇した。武藤さんは、27歳でALSが発症。試行錯誤しながら支える木綿子(ゆうこ)夫人と、患者らの未来を明るくするアイデアを形にし、病気の啓発と最新テクノロジーを使った活動をしている。毛利さんは2017年4月から取材を始め、ドキュメンタリーとして完成させた。胃瘻造設となったがこどもにも恵まれ、「未来を変えるアイデアを形に」しようと走り続ける “限界なき(No Limit)”挑戦に感動した。

 (2)若年性アルツハイマー型認知症

 板野郡医師会「第11回 在宅医療・介護連携推進事業」として、2月1日(土)に藍住町総合文化ホールで開催された。山根伸太会長らのご挨拶の後、映画「オレンジ・ランプ」(2023)が上映された。丹野智文さん(仙台市)は、2013 年に 39 歳で若年性認知症と診断され、現在は企業で働きながら、認知症当事者のためのもの忘れ総合相談窓口「おれんじドア」を開設されている。発症後の葛藤や、認知症をささえる社会、そしてスマホなどのITの利用を学んだ。上映後、丹野さんと板野郡の医療関係者とのパネルディスカッションがあった。大下直樹さん(認知症の人と家族の会)らも「徳島おれんじドア」を運営されている。なお2月12日(水)にも、阿南市で上映された。丹野さんの前向きでユニークな、そして思いの詰まったお話に感銘を受けた。

 紹介したロゼバラミンやレカネマブ(認知症の抗体薬)が上市され、iPS細胞などの再生治療などの研究が進展している。二つの映画からは、ITなどを用い患者さんとnarrative(物語的)な医療の構築も重要と感じた。

☆“NO LIMIT , YOUR LIFE(2023)”⇒https://www.masatane.toeiad.co.jp/
☆「オレンジ・ランプ(2023)」⇒https://www.orange-lamp.com/

筋萎縮性側索硬化症

(1)筋萎縮性側索硬化症

認知症

(2)認知症

5.編集後記

 御寄稿いただいた先生方をはじめ、日頃から県の医療行政を御支援いただいている皆様に心より感謝申し上げます。

 それでは、以上をもちまして「とくしま医師バンク通信」第201号を終わらせていただきます。まだまだ寒さが厳しいですが、くれぐれもご自愛ください。

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次回の「とくしま医師バンク通信」第202号は、令和7年3月19日(水)の発行予定です。

アドレスの変更・配信停止はこちら
https://www.pref.tokushima.lg.jp/dr-bank/mailmaga

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