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とくしま医師バンク通信ドクターカモンメールVoL.125(10月号)

目次

  1. 『患者と家族の思いをつなぐ移植医療』 徳島赤十字病院 徳島県臓器移植コーディネーター 大倉 和代
  2. トピックス
  3. 医師情報箱
  4. みどころ・イベント情報
  5. 『さらに、臨床内科・内分泌病理、そして「地域包括ケア」』美波町国民健康保険美波病院 院長 本田 壮一
  6. 編集後記

1.『患者と家族の思いをつなぐ移植医療』

徳島赤十字病院 徳島県臓器移植コーディネーター 大倉 和代

 徳島県臓器移植コーディネーター(以下コーディネーター)として、2012年4月から県内の臓器提供・移植に関する業務を行っています。日本では臓器移植を必要とする患者のうち、移植を受けられるのはわずか3%。最近ではドラマや映画で臓器移植が取り上げられることもありますが、一般的には馴染みの薄い医療です。臓器移植普及推進月間に際し、寄稿の機会をいただきましたので、コーディネーターの活動や業務を通しての思いを述べさせていただきます。

 コーディネーターの主な業務は臓器提供者(以下ドナー)発生時の対応と啓発活動です。ドナー情報には24時間体制で対応し、病院から連絡があれば、家族への説明、書類の作成、関係部署との連絡調整等の業務を行います。また、啓発活動として県内の病院訪問、研修会の開催、県民への情報発信等を行っています。

 私がこの仕事で最も大切にしていること、それはドナー家族の気持ちに寄り添う姿勢です。身内を失う悲しみのなかで、「臓器提供する・しない」どちらを選択するにしても、家族には大きな葛藤が生じます。家族が臓器提供を正しく理解するために必要な情報を伝えながら、「最期をどう迎えるか」「本人とって最善のことは何か」を家族と一緒に考えます。提供してよかったどうかは、その後の家族が歩む時間のなかで捉えていくことであり決断に正解や間違いはありません。提供後に家族から「本人の意思が叶えられてよかった」「提供したことに後悔はない」という言葉が聞かれると、安堵の気持ちとともにコーディネーターとしてのやりがいを感じます。

 臓器移植は、医師、看護師以外にも多くの医療者が関わるチーム医療です。病院や県を超えての活動もあり、様々な職種の人と思いを共有しあいながらコーディネーターとして自身のキャリアを高めることができます。今後もドナー家族に適切な支援を行い、移植医療に対する正しい知識を県民に発信できるよう取り組んでいきたいと思います。

2.トピックス

医師のキャリア形成に関する相談窓口

 徳島県では徳島大学と連携し,地域医療を担う医師のキャリア形成支援と本県の医師不足の状況等を把握・分析し,医師の地域偏在の解消や医師確保の支援等を行うことを目的として「徳島県地域医療支援センター」を設置しております。

 当センターでは,キャリア形成支援に係る相談窓口を設置していますので,お気軽にご相談ください。

→徳島県地域医療支援センターHP
http://www.t-cm.jp

医療勤務環境改善支援センター

 県では、「徳島県医療勤務環境改善支援センター」を設置し,医療労務管理アドバイザーや医業経営アドバイザーと連携し,県内の医療機関における勤務環境改善の取組を総合的に支援しています。

→徳島県医療勤務環境改善支援センターHP
http://anshin.pref.tokushima.jp/med/experts/docs/2015032500013/
 

3.医師情報箱

在宅医療・介護連携推進事業講演会

日時:平成30年10月19日 (金) 19:00~21:00
場所:徳島グランヴィリオホテル

(1)演題:「医師会・行政連動型「地域包括ケアシステム」構築への道~地域のニーズに応える医師会主導の在宅医療」

 講師:一般社団法人 横須賀市医師会 副会長 千葉 純 先生 

(2)演題:「横須賀市における在宅医療・介護連携推進の取り組み~最期まで住み慣れた場所で~」

 講師:横須賀市 健康福祉部 次長・地域医療推進課長 川名 理惠子 氏
 

AMR(薬剤耐性)対策臨床セミナーin徳島(かぜ診療ブラッシュアップコース)

日時:平成30年11月3日 (土) 15:00~18:00
場所:ザ・グランドパレス徳島メイプルルーム

(1)講演:「薬剤耐性(AMR)の現状」

 講師:国立国際医療研究センター病院 AMR臨床リファレンスセンター 具 芳明 先生

(2)講演:「急性気道感染症の診断・薬物治療・効果的な説明」

 講師:

 医療法人鉄蕉会 亀田総合病院 総合内科 圓尾 友梨 先生

 国立国際医療研究センター病院 AMR臨床リファレンスセンター 具 芳明 先生

 京都大学医学部附属病院 総合臨床教育・研修センター 臨床研究教育・研修部 山本 舜悟 先生
 

4.みどころ・イベント情報

ふるさとカーニバル阿波の狸まつり

日程:2018年11月2日(金)~11月4日(日)
場所:徳島市 藍場浜公園
TEL:088-655-7767 四国放送営業開発部
http://www.nihon-kankou.or.jp/tokushima/detail/36201ba2212054754

 会場内に設けられたステージでは、タレントショーやコンサート、芸能の発表などが繰り広げられます。他には、各市町村が自慢の特産品を販売するなどふるさと徳島の自然がいっぱい、人情ほのぼのをテーマに繰り広げるカーニバルです。

 また、藍場浜公園内特設テントでは臓器移植に関するリーフレットを配布し、クイズ等を実施します。

5.『さらに、臨床内科・内分泌病理、そして「地域包括ケア」』

美波町国民健康保険美波病院 院長 本田 壮一

 先月に続き、9月も連続して全国学会に参加・運営する機会を得た。その見聞を伝える。

1)2018年9月16日(日)・17日(月・祝日)横浜市で、第32回 日本臨床内科医学会(会長は宮川政昭先生)が開催された。テーマは「医識改革(意識改革)」。“学ぶ”という学会の本来の趣旨に添い、実践的なハンズオンから内科臨床の進歩に触れる機会となった。私どもも、「阿波踊りの『ぞめき』を地域医療に」と題したポスターを発表した。

2)9月21日(金)・22日(土)徳島大学の大塚講堂にて、第22回 日本臨床内分泌病理学会・学術総会が開催された。会長は、徳島大学の吉本勝彦教授(分子薬理学)。テーマは、「本学会発祥の地で病態を探る」。下垂体腫瘍の研究の頃、お世話になった故佐野壽昭先生(病理学)を偲んだ。私どもも、「地域での内分泌病理との接点〜副甲状腺や副腎腫瘍の症例より〜」と題してポスターを発表した。

3)10月5日(金)・6日(土)徳島市で、第58回 全国国保地域医療学会が開催された。学会長は半田病院の沖津修先生。白川光雄先生(宍喰診療所)とともに副会長として約2年間の準備を行った。台風25号の影響を受けたが、学会プログラムを無事終え、ほっとしている。

 「地域包括ケアで日本の未来を切りひらこう〜海・山・川の恵みの阿波(あわ)の国での実践〜」のテーマとした。学会2日目には、「地域包括ケアシステムの新しい展開 〜徳島での議論を全国へ〜」と題したシンポジウムを企画し、司会を務めた。私どもも、「津波災害を見据えた地域包括ケアの展開」、「人手不足の小病院から海外視察研修へ」という2つのポスターを発表した。1,000人を超える出席者を迎え、有益な議論ができた2日間となった。
◇ ◇ ◇

 教科書、webで医学・医療の知識を得ることができる。だが、実際に学会場に足を運び、聴講、質問そして発表することで、理解が深まると考える。留守番・当直を務めた頂いた諸先生に感謝し、得た知見を明日からの診療に活用したいと思う。ありがとうございました。

☆第32回 日本臨床内科医学会
http://kanagawamed.org/jpa32/
☆第22回 日本臨床内分泌病理学会・学術総会
https://www.nacos.com/jeps/convention.html

6.編集後記

 木々の葉も鮮やかに色づき始めました。皆様いかがお過ごしでしょうか。

 私は先日、NPO法人体験研修として東祖谷の「三嶺の自然を守る会」のもとで活動して参りました。三嶺の会では20年近く前から観光客の増加に伴う、ゴミやトイレの問題、希少植物の盗掘対策、そして近年はシカの食害対策等に取り組んでいます。私は初めシカの食害と聞いてもピンと来なかったのですが、温暖化の影響で10年ほど前から三嶺で急速に増加したニホンジカが、山の表面に生えた植物(希少植物を含む)や特定の木々を食べ尽くしている現状を目の当たりにすることで実感が湧きました。シカの食害は、山の多様性や美しさが失われるだけではなく、山肌がむき出しになることで、山の保水力が落ち、土砂崩れや河川の氾濫の危険性が高まるという点でも人々の生活に繋がっています。

 そして、災害と医療は密接に結びついています。今回の研修では、医療という視点ではなく、自然という普段とは異なった視点から人々の営みを考えることで、異分野間のつながりを実感することができました。徳島県は約8割が山地であるため、本県の地域医療を考える上でも自然の現状を把握できてよかったと思います。

 それでは、以上をもちまして「とくしま医師バンク通信ドクターカモンメール」第125号を終わらせていただきます。実りの秋を満喫してどうぞお元気にお過ごしください。



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次回の「とくしま医師バンク通信ドクターカモンメール」第126号は、
11月21日(第3水曜日)の発行です。

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