医学部を卒業して医師国家試験をパスしたばかりの医師がどの程度患者さんを診察・治療できるかというと、はなはだ怪しい。昭和の時代では、多くの新米医師は卒業医学部の医局に入って、専門医を目指して初期研修を受けた。怖い先輩達に「アホ・ボケ」と怒られながら、臨床技術・知識・態度を身に付けていった。今考えると強烈なパワハラの世界であった様な気もするが、どうにかしてこの新米を一人前にしようとする先輩諸氏の愛情を感じることも多く、又、同じ釜の飯を喰っているとの同門意識も強く、私は昭和の初期研修はそれほどの苦痛では無かった。しかし、指導してくれる先輩の当たり外れは非常に大きかった。
新医師臨床研修制度が実施されたが、多くの試行錯誤の結果、研修内容が徐々に修正・改善されてきた。指導医養成講習会もその一つであろう。大学病院で行われている専門医療に特化した高度先進医療のみを学んでも、医師としては不十分であろう。地域医療の中核病院で、common diseasesを学ぶことも重要である。この点で、卒業したての医師が、徳島県内の各種病院で初期研修できることは素晴らしいことだ。
初期研修プログラムでは、専門医の基盤となるプライマリ・ケアの基本的な診療能力を身につけさせ、医師としての人間性を涵養する必要がある。しかし、どの様なプログラムで研修医を指導しどの様に評価するかについて、十分に勉強している医師は少ない。また、爆発的に増加した生命科学情報や細分化された医学・医療に関する知識や技術を、どの程度、さらにどの様に研修医に教えるのか?非常に悩ましい点である。今回の指導医養成研修では、若手医師を指導するに時に発生する多くの悩みを、どの様に考えどの様に対応していくのか?workshop形式を用いて、皆で考え意見を出していくことで、少しでも良い指導方法を模索した。多分、絶対的に正しい指導法は無いが、今回参加した多くの指導医は、より良い指導法に近づくヒントを多く身に付けたのではないだろうか?臨床研修指導医が、その指導能力を磨いていくことが、徳島県の地域医療に貢献する若手医師を増やすことにつながると確信した。
徳島県では徳島大学と連携し,地域医療を担う医師のキャリア形成支援と本県の医師不足の状況等を把握・分析し,医師の地域偏在の解消や医師確保の支援等を行うことを目的として「徳島県地域医療支援センター」を設置しております。
当センターでは,キャリア形成支援に係る相談窓口を設置していますので,お気軽にご相談ください。
→徳島県地域医療支援センターHP
http://www.t-cm.jp
県では、「徳島県医療勤務環境改善支援センター」を設置し,医療労務管理アドバイザーや医業経営アドバイザーと連携し,県内の医療機関における勤務環境改善の取組を総合的に支援しています。
→徳島県医療勤務環境改善支援センターHP
http://anshin.pref.tokushima.jp/med/experts/docs/2015032500013/
日時:平成30年9月27日 (木) 19:30~21:00
場所:徳島県医師会館4階ホール
演題:「働き方改革と労働法制(仮)」
講師:日本医師会副会長今村聡先生
日時:平成30年10月9日 (火) 19:00~20:30
場所:ザ・グランドパレス徳島4階オークルーム
一般講演:「当院における脂質異常症治療の現状」
講師:徳島赤十字病院循環器内科栗本真吾先生
特別講演:「予後改善を目指す脂質異常症治療-LDLコレステロール低下の意義を再考する-」
講師:順天堂大学大学院医学研究科循環器内科学准教授岩田洋先生
8月の旧盆には、毎年、徳島市で阿波踊りが開催される。2018年は、その開催が危惧されていた(当メール8月号)が、無事挙行された。その熱気のさめやらぬ同市で、三週連続で、研究会が開催され参加したので報告する。
1)8月17日(金)から19日(日)には、徳島大学日亜メディカルホールなどで看護技術の国際シンポジウムが開催された(2nd Technological Competency as Caring in the Health Sciences 2018)。同保健学科のLocsin Rozzano、谷岡哲也の両先生が主催された。当院と共同研究を行った縁で、“Reflecting on the Happiness Derived from Engaging in Active Collaboration and Education (ACE) Program”と題してポスター発表を行った。アジア諸国(フィリピン、インドネシア、タイなど)の看護師や学生らとの交流の機会となった。
2)次の週の26日(日)には、昨年に続き「第2回 徳島地域包括ケアシステム学会」が、大塚講堂(徳島大学)で開催された。テーマは「地域を守る人を、守る」で、稲次正敬先生(藍住町)が大会長を務められた。認知症高齢者の運転や、美馬市木屋平地区の地域包括ケアの発表があった。私どもも「地域包括ケアで『認知症の津波』に対峙する」と題したポスターを発表した。多職種連携が重要と、再認識した。
3)さらに9月1日(土)には、徳島大学の藤井節郎記念医科学センターにて「第18回 日本内分泌学会四国支部学術集会」が開催された。会長は、同センターの福本誠二先生。糖尿病や、甲状腺・副腎・副甲状腺・下垂体の疾患などの最近知識を深める機会となった。私どもも「地域での内分泌診療~高カルシウム血症の2症例より~」と題して発表した。頻度は少ないが、地域医療において 内分泌疾患の病態を考えると診療のモチベーションを高めることを示した。
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いよいよ、10月5日(金)・6日(土)には、「第58回全国国保地域医療学会」が徳島市で開催される。地域包括ケアや、地域医療の最前線を学ぶ場として準備した。席に余裕があり当日参加も可能なので、このメールの読者のご参加を期待する。
★徳島大学 医学部保健学科 看護技術学分野
⇒http://www.tokushima-u.ac.jp/med/health_science/course/kisokango/kango_gijutsu/
★第2回 徳島県地域包括ケアシステム学会
⇒https://www.toccs.jp/
★藤井節郎記念医科学センター 分子内分泌学研究分野
⇒http://www.fujii.tokushima-u.ac.jp/nuclearreceptor/
いくぶん残暑も和らぎ、しのぎ良い日が多くなりました。皆様いかがお過ごしでしょうか。
私は先日、徳島県臨床研修指導医養成講習会にスタッフとして参加しました。受講されている先生方が研修医の指導について熱く議論されているのを伺うことで、今月で社会人になって半年が経つ私自身、内省する良い機会となりました。人間性と専門性の両方を均衡を保ちつつ高めていくこと、そして日々の業務に勤しみながらも初心を忘れないことを今後も心がけていきたいと思います。
それでは、以上をもちまして「とくしま医師バンク通信ドクターカモンメール」第124号を終わらせていただきます。夏の疲れが出やすい時節、くれぐれも体調を崩されませぬようご自愛ください。
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次回の「とくしま医師バンク通信ドクターカモンメール」第125号は、
10月17日(第3水曜日)の発行です。
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