畜産研究課 Livestock Research Division
酪農肉牛担当
試験研究課題名:国産飼料を最大限に活用した乳肉用牛育成技術の確立
結果:乳牛,肉牛の育成段階において,育成用配合飼料の4割を飼料用米で代替し,さらに自給粗飼料であるイタリアンライグラスサイレージを組み合わせた管理を検討した。乳牛,肉牛共に国産飼料主体で育成した自給飼料区での発育は対照区と比較しても遜色なかった。また,自給飼料区では血中尿素窒素(BUN)が低い傾向で推移したことから飼料中蛋白の利用効率の向上が示唆された。乳牛,肉牛のいずれにおいても自給飼料区の1日あたりの飼料コストが最も低かった。
試験研究課題名:「阿波牛」採卵成績UP!飼養管理技術の開発
結果:和牛繁殖農家における受精卵移植は当課から提供している受精卵や農家所有の繁殖牛から採卵した受精卵を飼養する。農家により牛の飼養管理は異なっており,栄養の過不足は採卵成績を低下させるため,採卵成績を向上させる栄養水準を検討した。発情から採卵前日まで粗飼料を増飼し,代謝プロファイルテスト及び採卵成績を比較した結果,配合飼料の増飼により栄養バランスが改善され,正常卵数およびAランク卵数が増加する傾向にあった。
養豚担当
試験研究課題名:豚の遺伝子再生技術の確立
共同研究機関:徳島大学
結果:阿波とん豚の体外受精卵を3頭のランドレースに移植した結果,1頭に妊娠が確認されたことから胚移植レシピエント作成にeCGおよびhCGを利用した発情同期化法が使用可能なことが示唆された。また精液凍結過程で100μMのCGAまたはCAを添加することで融解後の精子の運動性、生存率および細胞質膜の正常性を向上させることが判明した。一方でCGAおよびCAの添加は受精率、胚発育率に有意の効果はないことが判明した。
養鶏担当
試験研究課題名:阿波尾鶏鶏肉の品質向上技術の開発
共同研究機関:新潟大学
結果:地鶏「阿波尾鶏」に、飼料中に含まれるトウモロコシの80%を玄米に置換した飼料(玄米含量52%)を、長期給与(出荷前9週間)した結果、慣行給与飼料(トウモロコシ主体)と同等の生産成績が得られた。また、飼料中トウモロコシの40%を玄米に置換した飼料(玄米含量22%)を、出荷前4週間給与すると、モモ肉から抽出したスープの「味の濃さ」、「コク」、「後味」などが強くなった。一般的に、飼料用米を給与した鶏肉の色は白くなる(b*値が低下)が、色素を多く含む原料(コーングルテンミール)を添加することにより調節が可能であった。
飼料環境担当
試験研究課題名:飼料用トウモロコシにおける茎葉処理剤の比較試験
結果:高栄養粗飼料である飼料用トウモロコシ生育期間中に,イチビ,ジョンソングラス,メヒシバ等の雑草が繁茂し,減収や収穫作業の障害になる事例が発生している。そこで,茎葉処理除草剤の比較評価を行い,本県に適応する雑草防除体系について検討した。その結果,ニコスルフロンとハロスルフロンメチルの混剤が最も除草効果に優れていた。また,乾物収量1kgあたりの除草剤コストは,ペンタゾンが0.8円,トプラメゾンが1.3円,ニコスルフロンとハロスルフロンメチルの混剤が1.3円となった。
No | 担当 | 研究課題名 | 研究内容 | 研究期間 | 共同・協力機関 |
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1 | 酪農肉牛 | 機能性飼料を活用した暑熱ストレス軽減技術の開発 | 地球温暖化の影響による生産性の低下を軽減するため採食量低下を補う効率的なエネルギー補充技術、地域未利用資源を活用した酸化ストレス低減技術について検討する。 | H28~H30 | |
2 | 酪農肉牛 | 乳用牛の泌乳量の平準化とAI(人工知能)の活用による健全性向上技術の開発 | 泌乳量の平準化による健全性向上のため、乾乳期飼養方法を確立するとともに、農家における経済性を評価し、生涯乳量の向上と生産コストの低減を図る | H28~H32 | 岐阜県、岡山県、広島大学、家畜改良センター |
3 | 酪農肉牛 | 乳用牛の泌乳中のエネルギーバランスにおける遺伝的能力評価形質の検索 | 乳用牛における生涯生産性の育種改良に必要な評価形質の解明並びに生涯生産性における遺伝的能力評価手法の開発について検討する。 | H29~H31 | 筑波大学、酪農学園大学、他11府県 |
4 | 酪農肉牛 | 乳牛の分娩間隔短縮を図る抗酸化物質給与技術の検討 | 乳牛の平均分娩間隔延長の改善を図るため、抗酸化物質(ポリフェノール)給与による分娩間隔の短縮化に伴う収益向上について検討する。 | H29~H31 | |
5 | 酪農肉牛 | 牛受精卵を用いた性染色体蛍光標識による性判別技術の開発 | 電気穿孔法により性染色体に結合する蛍光色素を導入し、可視により雌雄判別された牛雌受精卵の移植後の受胎性について検討する。 | H30 | |
6 | 酪農肉牛 | 国産飼料を最大限に活用した乳肉用牛育成技術の確立 | 輸入飼料価格の影響を受けにくい養牛経営を育成するため、県内自給飼料に加え、濃厚飼料を飼料米に代替した乳肉用牛の育成技術について検討する。 | H28~H30 | |
7 | 酪農肉牛 | 免疫力UP!疾病を防ぐ和牛哺育技術の確立 | 和牛繁殖農家の収益向上を図るため、子牛の哺乳期における疾病率の低減に向けた人工保育技術について検討する。 | H28~H30 | |
8 | 酪農肉牛 | 飼料用稲の有効活用及び和牛繁殖牛の生産性向上による阿波牛ブランド競争力強化 | 耕畜連携で生産された県産稲発酵粗飼料(WCS)の有効活用とWCSの機能成分や繁殖機能に与える影響について検討する。 | H28~H30 | |
9 | 酪農肉牛 | ICT技術を活用した省力化と肥育期間短縮による収益向上の検討 | 育成牛の早期肥育開始を可能とする育成技術を確立するとともに、超音波診断装置を活用した各肥育段階での肉質検査を行い、早期肥育牛の出荷を可能とする飼養管理技術を確率する。 | H30 | |
10 | 酪農肉牛 | 県産飼料用米の活用による和牛肥育技術の確立 | 県産飼料用米給与による効率的かつ飼料コスト削減を可能とした和牛肥育技術の確立を図る。 | H29~H31 | |
11 | 養豚 | 香酸柑橘類を活用した高付加価値豚肉生産技術の開発 | 県特産品である“スダチ”と“ユズ”残渣を肥育期飼料として活用し、輸入肉及び一般国産豚肉との差別化、高付加価値化を図った豚肉を生産する技術を開発する。 | H29~H31 | |
12 | 養豚 | DNAマーカーを活用した大ヨークシャー種繁殖性改良技術の開発 | 大ヨークシャー種の繁殖性等の生産性の改良について、DNAマーカー情報を活用して効率的な繁殖能力の改良技術を開発する。 | H29~H31 | |
13 | 養豚 | 豚の遺伝子再生技術の確立 | 口蹄疫汚染等のリスク管理の一つとして、これまでに開発・改良したブタの遺伝資源の保存および再生技術を確立する。 | H30 | |
14 | 養豚 | 阿波とん豚の生産性改良技術の開発 | これまでの研究で繁殖性との関連性が示唆されたDNAマーカーについて、調査数を増やし、DNAマーカーとしての有効性を検証する。 | H30 | |
15 | 養鶏 | 自給飼料を活用した豚肉、鶏肉、鶏卵の差別化技術及び低コスト生産技術の開発 | 地域資源や飼料用米等の自給飼料を活用し、特色のある豚肉や鶏肉・鶏卵の低コスト生産技術を確立し、実証する。 | H28~H30 | 新潟大学、愛知県等 |
16 | 養鶏 | 阿波尾鶏の経営力を高めるLED照明技術の開発 | 行動制御効果の高い青色LED光と、生育後期の増体向上効果が高い白色LED光が「阿波尾鶏」の生育に及ぼす影響を調査し、慣行飼育に適する照明プログラムを作成する。 | H30~H32 | |
17 | 飼料環境 | 府県型イアコーンサイレージ生産利用体系の開発と実証 | 国産濃厚飼料の生産システムの構築を目的に、野菜農家の緑肥作物として飼料用トウモロコシを栽培し、子実(イアーコーン)のみ収穫を行い、家畜の濃厚飼料とする作業システムを構築する。飼料用トウモロコシの茎葉は野菜の緑肥とし、その効果を検証する。 | H29~H31 | 革新工学セ、タカキタ、岡山農総セ、フタバ飼料、西日本農研 |
18 | 飼料環境 | 不耕起栽培を利用した暖地2年5作体系による飼料増産技術の開発 | 不耕起栽培を取り入れた西南暖地における2年5作体系の飼料作物栽培技術を確立する。 | H27~H31 | |
19 | 飼料環境 | 粉砕モミガラの敷料・堆肥化試験 | 入手困難となりつつあるオガクズの代替として粉砕したモミガラの敷料利用を検討するとともに敷料使用後の堆肥化特性も検討する。 | H28~H30 |