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適当育児の勧め

助産師として、「おっぱい相談」をしていると「離乳食をきちんと食べないのです」「赤ちゃんの睡眠時間が短い気がする。」「母乳を長く飲ませるほうがいいというけれど」と本やネットの情報通りになっていない場合、とても不安がるお母さんが多い。

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そこで、私は子育てにおいて「適当育児」を勧めている。
「適当」とは、
1. ある条件・目的・要求などに、うまくあてはまること。かなっていること。
ふさわしいこと。また、そのさま。
「工場の建設に―な土地」「この仕事に―する人材」

2. 程度などが、ほどよいこと。また、そのさま。
「調味料を―に加える」「一日の―な仕事量」

3. やり方などが、いいかげんであること。また、そのさま。
悪い意味で用いられる。
「客を―にあしらう」「―な返事でごまかす」(Google辞書)である。

私は、この1.2.の意味で解釈し、適当育児とは、その親子にとって、うまくあてはまっている、ふさわしい育児と考える。
つまり、頑張りすぎない、程度がほどよい育児のことである。

例えば、母乳育児の授乳期間である。
母乳育児において、乳幼児の栄養に関するイノチェンティ宣言では
「最適な栄養方法とは、生後6ヵ月間は完全に母乳だけで育て、その後適切な補完食を与えながら、2歳かそれ以上まで母乳育児を続けること」
を推奨している。
母乳育児の長期継続、母子双方にとって多くのメリットが報告されている。

イノチェンティ宣言とは、「1990年8月1日にイタリアにあるスペッダーレ・デリ・イノチェンティ(ヨーロッパ最初の孤児と捨て子の養育院)において開かれた会議の中で、作成・承認された母乳育児を推奨する宣言」のことです。

しかし、現場では「もう少し母乳を飲んでほしいけど、急に飲まなくなって・・」という母親の声や「母乳を飲ませること良いことはわかっているけど・・・夜間授乳が辛くてそろそろやめたいのです」という母親の声がある。
このように子ども自ら母乳を止めたり、子どもが欲しがるけど母親が辛くて止めたい場合がある。

助産師として、できるだけ長期間母乳を飲ませてほしいけれど、それぞれの親子によって卒乳・断乳の時期は違うのではないかと感じる。
子どもの意思で辞める「卒乳」は一つの子どもの成長と考えることができ、母親から辞める「断乳」は母子にとって初めてのりこえる試練と考えることができる。
授乳を終えるとき、母親も子どもも納得したうえで授乳をやめることが最も大切で、その時期はそれぞれの母子によって異なってくる。

このように、育児はそれぞれの家庭によって、教科書通りの育児ができないことが多いのである。

だから私は「適当育児」を勧めている。
適当育児のコツは、お母さんが一番楽なこととお母さんが楽しいことである。
頑張らない、程度が程よい育児が一番いい。

本来、人間の子育ては、「一人ではできない、集団で育てる」種族なので誰かに頼って良い、こうでなければならないという決まりきった育児はないことを認識することが大切である。
子育てが辛いときは、いろいろな人を頼り、たまには身体を休めたり、子どもを預けてお出かけしたりして、気分転換を図りましょう!
育児は、親子にとってうまくあてはまっているふさわしい育児「適当育児」がおすすめですよ!

作成者
徳島文理大学 助産学専攻科 教授
森脇智秋 (助産師)