文字サイズ

やさしいブラウザ・クラウド版はこちらからご利用下さい

労働相談Q&A

業務・通勤上の事故について(質問と回答)

質問

具体的な適用事例(業務災害)

仕事中の事故によってケガをした場合、労災保険が適用されるには、「業務災害」と認められる必要があると聞きました。しかし、具体的にどのような事故が「業務災害」にあたるのかいまいち分かりません。何か基準のようなものはあるのでしょうか?

回答

まず、「業務災害」であるためには、
(1)使用者の支配・管理下で業務に従事していること(業務遂行性)
(2)業務遂行に伴う危険(例えば、運転手の場合であれば交通事故など)
が現実に発生したものであり、業務との因果関係が認められること(業務起因性)、の2つに要件に該当しなければなりません。

ただ、「就業時間中に、仕事をするため、職場の設備を使用してケガをした」などという場合のように、明らかに「業務災害」と判断できる場合は良いのですが、休憩時間中の災害や、出張中の災害などが「業務災害」に当たるかは判断が困難になるかと思われます。そこで、以下では具体的な例を挙げて「業務災害」に該当するかどうかを説明します。

例1:出張中の事故について
出張中についても、基本的に業務遂行性、業務起因性が認められることになります。例えば、出張先での業務遂行中だけでなく、業務遂行先への移動時間、業務遂行のための「待機時間」(ホテル滞在中など)に発生した災害は「業務災害」になります。ただし、業務の合間に、私的に外食したり、飲み屋などに行っている時間及びそれらの店と滞在先への往復時間については、「待機時間」とは認められません。また、私的な行為の最中に起こった事故は、「業務遂行に伴う危険が現実に発生した」ものとも言えないので、業務との因果関係が認められません。したがって、出張先での私的行為については、上記(1)、(2)の要件を満たさないので「業務災害」にはなりません。

例2:休憩時間中の職場における事故について
業務に従事していないので、上記(1)の基準から判断すれば、休憩時間中の事故は基本的に「業務災害」に当たりません。しかし、休憩時間中であっても、事業所の施設・設備の管理状況に問題があって発生した災害については例外的に「業務災害」に該当する場合があります。したがって、例えば、休憩時間中、職場の棚から物が落下してきて負傷した、などという場合は「業務災害」になる可能性があります。

例3:就業時間中、トイレに行く途中でケガをした場合
就業時間中の用便については、「業務に付随する行為」として取り扱われるので、(1)の業務遂行性があると認められます。したがって、不必要に何度もトイレに行ったりしない限りは「業務災害」になります。例えば、就業時間中にトイレへ行く途中、階段を踏み外してケガをした、という場合は「業務災害」になります。

質問

具体的な適用事例(通勤災害)

先日、会社での終業後、気の合う友人と1時間程談笑して退社したところ、帰路の途中、自転車で転倒し、全治1週間のケガをしました。
このような場合でも、「通勤災害」として労災が適用されるのでしょうか。終業後すぐに帰らずに事故に遭った場合でも「通勤災害」になるのでしょうか。

回答

まず、「通勤災害」における「通勤」とは、「就業に関連して住居と就業の場所との間を、合理的経路及び方法により往復すること」を言います。「就業に関連して」ということなので、業務に就くために出社する、業務を終えたから退社するというように、業務と往復行為が密接に関連していなければなりません。

こうして考えますと、ご相談のケースでは、終業後1時間も会社に残っていることから、「業務を終えたから退社」したのではなく「友人とのおしゃべりが終わったから退社」したようにも思われます。そうなると帰路の途中については「通勤」と認められず、「通勤災害」とは認められないことになります。

しかし、片付けや着替えなどの帰る準備をしていたら、5分や10分経過するのは普通に考えられることで、わずかでも終業時間を経過したら業務との関連性が否定されるのでは、「通勤災害」と認められる事例がほとんどなくなってしまいます。そこで、終業後どれぐらい経過したらダメなのか、が問題になります。

これに関しては、国が通達を出しており、「終業後2時間以内」なら基本的にOKだとされています。もちろん、特殊な事情がある場合は2時間を超えても大丈夫です。

したがって、ご相談の場合も、終業後2時間は経過していないので「通勤災害」に該当すると思われます。

質問

具体的な適用事例(通勤災害その2)

退社後、寄り道してスーパーで日用品の買い物をし、その後、通勤で毎日通っている道まで帰ってきたのですが、自宅へ帰る途中、上から看板が落ちてきて、頭を数針縫うケガをしました。
これは「通勤災害」に当たるのでは、と思いましたが、以前に、1度でも会社と自宅との通勤経路を外れてしまった場合は、「通勤災害」とは認められないと聞いたような気がします。実際はどうなのでしょうか。

回答

まず、「通勤災害」における「通勤」とは、「就業に関連して住居と就業の場所との間を、合理的経路及び方法により往復すること」を言います。お話の通り、通勤経路を外れてしまった場合は、「住居と就業の場所との間を往復すること」にはなりませんので、「通勤」には該当せず、途中で発生した事故についても、当然「通勤災害」には当たりません。

さて、ご相談のケースは、いわゆる「往復の経路を中断」した場合に該当します。具体的に申しますと、通勤途中で映画を観に行ったり、スポーツクラブに行ったりする場合が「中断」になります。この「中断」があった場合、「通勤災害」とは認められないというのは前述の通りですが、これにはいくつかの例外があります。

例外と言うのは、「往復の経路を中断」した後の行為が、
(1)日用品の購入
(2)選挙権の行使
(3)病院または診療所において診察・治療を受けること
など日常生活上必要な行為である場合で、このような場合は、往復の経路に復帰した後は再び「通勤」として扱われます。

そこで、ご相談の内容を見てみますと、スーパーで日用品の買い物をすることは、例外(1)の「日用品の購入」に該当し、また、ケガをしたのも通勤で毎日通っている道で、ということなので、往復の経路に復帰したところで事故に遭ったといえます。したがって、「通勤災害」に当たると考えられます。

質問

具体的な適用事例(通勤災害その3)

会社へ向かう途中、いつも通っている道が通行止めになっていたので、回り道をしたところ、自転車と正面衝突し、全治2週間のケガをしました。
会社に届け出ている通勤経路と異なる道を通っていた最中での事故なのですが、このような場合でも「通勤災害」に当たるのでしょうか。ちなみに、回り道とは言っても、会社に着く時間はほとんど変わりません。

回答

まず、「通勤災害」における「通勤」とは、「就業に関連して住居と就業の場所との間を、合理的経路及び方法により往復すること」を言います。

ご相談の場合、問題になるのは、回り道をすることで通ることになった経路が「合理的な経路」と言えるか、ということです。

その解釈についてですが、「合理的な経路」というのは、通勤のために通常利用できる経路であれば良く、決して最短、最善の経路のみを指すわけではありません。したがって、例えば、当日の交通事情により迂回する経路を選んだ場合、鉄道が止まったのでバスを利用する経路に変更した場合、マイカー通勤者が自宅から離れた駐車場を経由して通勤する場合などは「合理的な経路」を通ったものとして認められます。しかし、特段の事情もなく遠回りするような場合は「合理的な経路」とはなりません。

したがって、ご相談の場合も、「通勤災害」に当たると思われます。

質問

労災の給付内容について

私は、職場でフォークリフトを動かしています。もし、仕事中にケガをした場合、どのような補償を受けることができるのでしょうか。労災補償という制度があると聞きました。どのようなものか教えて下さい。

回答

労働災害(労働者の業務上の死亡、負傷、疾病)に対する補償制度は、労働基準法に基づく「災害補償」と労働者災害補償保険法に基づく「労災保険」の二本立てになっています。

労働基準法に基づく「災害補償」は、労働者に重過失がない限り、使用者の過失の有無にかかわらず法定の補償が行われるという点に特徴があります。

しかし、「災害補償」はあくまでも使用者(会社)から支払われるものなので、使用者に支払い能力がなければ補償されませんし、そもそも補償の水準もあまり高くありません。そこで、国は、使用者に保険料の納付を義務づけ、労働者が保険によって労災補償を受けることができる保険制度を確立させています。これが労働者災害補償保険(労災保険)といわれるものです。

労働者を1人でも雇っている会社は必ず労災保険に加入しなければならず、保険料も全額会社負担になります。また、労災は、パート、アルバイト、契約社員、派遣労働者など、「全ての労働者」に適用されます。もちろん、日雇い労働者や、1日限りのビラ配布などの労働者に対しても適用されます。労災保険の給付内容は以下のようになっています。

労災保険の保障給付の主なもの

(1)療養補償給付:ケガや病気が治るまで、無料で治療が受けられます。

(2)休業補償給付:療養のため働くことができず賃金がもらえない時は、休業4日目から1日につき給付基礎日額(平均賃金)の60%が支給されます。さらに、労働福祉事業より20%に相当する額の休業特別支給金が併せて支給されます。したがって、計80%の給付が受けられることになります。

(3)障害補償給付:ケガや病気が治った後障害が残った場合、その程度に応じ障害補償年金あるいは障害補償一時金が支給されます。

(4)遺族補償給付:死亡した場合は、遺族補償年金、あるいは遺族補償一時金が支給されます。

申請や各種手続に関することは、最寄りの労働基準監督署にお問い合わせください。