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労働相談Q&A

賃金について(質問と回答)

質問

知っておいてソンはない、賃金支払いの5つの原則

私は、来春就職予定の高校3年生です。「給料の支払いが口座振り替えになっており、現金でないのであまり実感がわかない。」とか「給料の支給日が一定していない。」などということを、何人かの先輩から聞いたことがあります。
私は、給料は現金で決まった日にもらいたいのですが、もらえるのでしょうか。

回答

賃金が労働者の手に確実に渡るよう、労働基準法第24条において、賃金は、(1)通貨で、(2)直接労働者に、(3)その全額を、(4)毎月1回以上、(5)日を決めて支払わなければならない、と定めています。これを、賃金支払いの5原則と言います。

よって、会社は、定まった日に、現金か銀行の口座振替で支給しなければなりません。現在は、現金支給よりも銀行振込が多数ですが、現金で支給して欲しい旨を会社に言えば、現金で支給してくれます。

ここで、通貨支払いの原則について簡単に説明しておきます。
原則は通貨払いですが、最近は賃金の口座振り込みが一般的になっています。
その場合は、 
(1)一人ひとりの労働者の意思にもとづき労働者の指定する金融機関に振り込まれること
(2)労使協定を結んでいること
(3)賃金の計算書を交付すること
(4)賃金支払日の午前10時頃までには引き出せる
等の要件を満たさなければなりません。

質問

だれでもわかる!?給料明細書の中身

だれでもわかる!?給料明細書の中身

回答

みなさんは、給料といえば、会社からもらった額が給料の全額だと思っていませんか。実はそうではないのです。それは「手取額」といって、基本給に各種手当てを足した額(合計支給額)から、健康保険料や税金などを控除した額(合計控除額)を差し引いた額となります。

手取額=合計支給額-合計控除額

基本給、各種手当てや控除項目を記入してあるのが、給料明細書です。これは、やたら細くて小難しい項目の名前が並んでいて、わかりにくいものです。君たちも初めて給料をもらった時、明細書をみれば実感します。
しかし、4月からは会社員の一員となるのだから、給料明細書ぐらいは読めるようにしておきたいものです。ここでは、明細の主な項目について簡単に説明しておきます。

支給〈会社が社員に支払うもの〉の主な項目

基本給:本人の年齢や能力などによって決められる「年齢給」や「能力給」など、給与・賞与などの基本となる額。
扶養手当:扶養親族などのいる労働者に支給される手当。家族手当とも呼ばれる。
残業手当:規定(法定)の時間以外で働いたときに支給される手当。
通勤手当:定期代など、通勤のためにかかる交通費の実費を支給する手当。ただし、上限がある会社が多い。
住宅手当:家賃を補助する手当。

控除〈収入から引かれるもの〉の主な項目

健康保険料:保険料を、会社と労働者が折半して納める。医療費の本人及び扶養親族の負担が3割ですむこと以外にも、多くのメリットがある。
厚生年金:会社と労働者が折半して納める。いわゆる老後(65歳以上)の年金の原資となり、今後も負担の増加が見込まれる。
介護保険料:40歳以上になれば、負担することとなる。
雇用保険料:失業保険制度の保険料のことで失業した際に支給される。会社を辞めた時は忘れずに。
所得税:国に納める税金で、給与所得者いわゆるサラリーマンは、毎月の給料から『源泉徴収』される。
住民税:地方自治体に納める税金で、都道府県民税と市町村民税の二つがある。
組合費:労働組合があり、加入した場合に支払う費用。

質問

うれしいボーナスの天国と地獄

私は、11月の末に退職しようと思っています。ところで、私の会社のボーナスは12月の第1金曜日が支給日で、6月から11月までを算定期間としていますが、今の予定で行くと、ボーナスの支給日には退職していることになります。 このような場合、ボーナスをもらうことはできないのでしょうか。

回答

ボーナス(賞与、一時金)は、毎月払いの給料(賃金)のように、必ず支給しなければならないものでなく、その支給基準、支給額、支給方法、支給日、支給対象者などは、自由に定めうるものです。しかし、会社によって労働協約や就業規則などで、賞与の支給時期や金額、支給対象などが定められている場合には、使用者はその規定通りに支払わなければなりません。
よって、お尋ねの場合は、就業規則等でどのように規定されているかによって、ボーナスの支給が受けられるかどうか運命の分かれ道になります。
もともと賞与は過去の労働に対する報酬という意味の他に、これからも頑張ってくださいよ、という気持ちが込められているので、「支給日に在籍していること」が条件とされている会社が多く、辞めてしまった人に支払われる場合はほとんどないのが現実です。
ですから、会社の就業規則を確認し、できれば支給日以降に退職する方がトクをすることになります。

質問

知っておこう!残業・休日出勤の割増賃金の計算法

私は、今春、就職したものです。会社から残業(時間外勤務)の説明を受けたところ残業時間に対し、割増賃金を支払うとのことでした。ところで割増賃金は労働基準法に規定されているそうですが、割増賃金の算定基礎について教えて下さい。

回答

割増賃金は、(1)時間外、(2)休日、(3)深夜(午後10時~午前5時まで)の労働に対し、「通常の労働時間賃金に2割5分以上5割以下の範囲内でそれぞれ命令で定める率以上の率で計算した割増賃金を支払わなければならない」(労働基準法第37条)と規定されています。

注意しなければならないのが、割増賃金の基礎となる賃金には、家族手当、通勤手当、別居手当、子女教育手当、臨時に支払われた賃金、1か月を超える期間ごとに支払われる賃金の6種類が除かれることです。

具体的な割増率ですが、(1)時間外労働は2割5分以上、(2)休日労働は3割5分以上、(3)深夜労働は2割5分以上の率となっています。ただし、ここでいう休日や時間外は、あくまでも労働基準法に定められた週1日の休日や、1日8時間又は1週40時間を超える労働時間のことであり、就業規則で週休2日と決められている場合に、例えば土曜日の出勤が3割5分以上の割増賃金となるというものではありません。

割増賃金は、残業と深夜労働の場合、午後10時までは2割5分以上、午後10時以降午前5時までは5割以上となります。休日労働と深夜労働の2つが重なった場合は6割以上となるのでご注意ください。

質問

賃金制度の不利益変更について

私が勤めている会社は、昨今の不況から赤字経営が続いています。先日、社長から「収支改善のため、来年度の給料を引き下げる」と言われました。会社の意向なのですが、受け入れなければならないのでしょうか。

回答

労働契約法第10条では、労働条件の不利益変更は、(1)変更後の就業規則を労働者に周知させ、かつ、(2)就業規則の変更が、労働者の受ける不利益の程度、労働条件の変更の必要性、変更後の就業規則の内容の相当性、労働組合等との交渉の状況その他の就業規則の変更に係る事情に照らして合理的なものであると認められない限りできません。
また、就業規則の変更を伴わない場合でも、労働者の合意がなければ、労働条件を不利益に変更することはできないとされています(判例)。
以上のことを踏まえた上で、他の社員とともに、社長に話し合いを求めましょう

質問

「名ばかり管理職」について

「名ばかり管理職」とは何ですか。なぜ、管理職なのに残業代を支払わなくてはならないのでしょうか。

回答

「名ばかり管理職」とは、実際に管理職としての権限や裁量、待遇面での優遇措置等がないにもかかわらず、役職上は管理職とされている人たちのことをいいます。

管理職は、正確には労働基準法41条3項の「監督若しくは管理の地位にある者又は機密の事務を取り扱う者」を指します。

管理職は、原則として使用者と一体の地位にあるとみなされるため、時間外労働や休日労働をした場合でも、労働基準法上の割増賃金を支払わなくても良いことになっています。

しかし、管理職に該当するかどうかは、役職名にかかわりなく、本当に管理職としての権限や裁量などを持っているか(使用者と一体といえるかどうか)で判断されます。つまり、「名ばかり管理職」は、管理職としては認められません。したがって、「名ばかり管理職」に対しては、通常の労働者と同様、時間外や休日労働に対する割増賃金を支払わなければなりません。

管理職として認められるには、(1)労働条件の決定や労務管理で経営者と一体的な立場である、(2)出退勤等において、労働時間の裁量がある、(3)賃金、役職手当において相応の待遇が保障されている、などの要件を満たすことになります。

ですから、いくら管理職とされていても、例えば、タイムカードを持たせているような場合は、(2)の要件に反していることになり、管理職とは認められません。

また、管理職であっても、深夜手当や年次有給に関する規定は適用されます。