蚊媒介感染症とは、ウイルスや細菌などの病原体を保有する蚊に刺されることによって起こる感染症のことです。
主な蚊媒介感染症として、デング熱、チクングニア熱、ジカウイルス感染症、マラリアなどがあります。
病原体(デングウイルス)を保有する蚊(ネッタイシマカやヒトスジシマカなど)に刺された後、3~7日の潜伏期を経て、急激な発熱、発疹、頭痛、骨関節痛、嘔気・嘔吐などを引き起こします。通常は、発病後2~7日で解熱します。
デングウイルスに感染しても発症する頻度は10~50%で、予後も比較的良好ですが、まれに重症化し、デング出血熱あるいは重症デング熱として出血症状、血液循環不全、肝機能障害などを起こすことがあります。重症化した場合、早期に治療を行わなければ死亡することもあります。
流行地域は、媒介する蚊の生息する熱帯・亜熱帯地域、特に東南アジア、中南米、カリブ海諸国ですが、アフリカ、オーストラリア、中国、台湾においても発生しています。日本では、60年以上国内における感染報告はありませんでしたが、2014年8月以降報告が続いています。
有効な抗ウイルス薬はなく、治療は対症療法が中心となります。
病原体(チクングニアウイルス)を保有する蚊(ネッタイシマカやヒトスジシマカなど)に刺された後、3~7日の潜伏期を経て、急激な発熱、関節痛、発疹、頭痛、倦怠感、リンパ節腫脹などを引き起こします。
デング熱と非常に類似しているため、臨床症状のみでの鑑別は困難ですが、チクングニア熱の場合は、関節痛だけでなく関節腫脹を伴う場合があり、また急性症状が治まった後も、関節炎が再燃することがあります。
有効な抗ウイルス薬はなく、治療は対症療法が中心となります。
病原体(ジカウイルス)を保有する蚊(ネッタイシマカやヒトスジシマカなど)に刺された後、2~7日の潜伏期を経て、軽度の発熱、発疹、結膜炎、関節痛、筋肉痛、倦怠感、頭痛などを引き起こします。無症状や症状が軽くすむ場合も多く、感染に気づかないこともあります。
母体から胎児への感染を起こすことがあり(先天性ジカウイルス感染症)、小頭症などの先天性障害を起こす可能性があります。
少数ではありますが、流行地域では性行為によるヒトからヒトへの感染の報告もあります。
流行地域は、アフリカ、中南米、アジア太平洋地域で、特に近年は中南米等で流行がみられます。
有効な抗ウイルス薬はなく、治療は対症療法が中心となります。
病原体(マラリア原虫)を保有する蚊(ハマダラカ)に刺された後、1週間~4週間の潜伏期を経て、発熱、寒気、頭痛、嘔吐、関節痛、筋肉痛などを引き起こします。
原虫の種類により、熱帯熱マラリア、三日熱マラリア、四日熱マラリア、卵形マラリア、二日熱マラリア(サルマラリア)の5種類の病型がありますが、熱帯熱マラリアは発症から24時間以内に治療しないと重症化し、しばしば死に至ります。
世界100カ国余りで流行がみられ、アフリカの他、アジアや南太平洋諸国、中南米でも多く発生しています。日本国内での感染の報告はありませんが、輸入感染(海外からの帰国後に発症)例は毎年報告されています。
治療は、抗マラリア薬の投与を行います。流行地域への渡航前に抗マラリア薬の予防内服をすることもできますが、マラリアの感染を必ず防げるものではありません。
病原体を保有する蚊に刺されないことが重要です。
蚊媒介感染症の流行地域に渡航する場合は、長袖・長ズボンを着用して肌の露出を抑える、蚊の忌避剤(虫よけスプレーやローション等)を使用する、など十分な対策を心がけてください。
また、海外からの帰国後に症状が出た場合は、すみやかに医療機関を受診し、海外への渡航歴をお伝えください。
保健所では、デング熱、チクングニア熱、ジカウイルス感染症(、マラリア)が疑われる例を対象に、行政検査をご案内しています。
検査実施についてのご相談や、検査の方法・必要検体等についてのご説明をしますので、検体採取前に保健所までお問い合わせください。
また、保健所では、蚊媒介感染症が疑われる患者様に対して、必要に応じて感染源の究明及び感染拡大防止のための疫学調査を行います。ご診察の際に、あらかじめ説明をお願いいたします。
以下の疾患は感染症法に定められた四類感染症(全数把握疾患)です。
診断が確定した症例については、発生届を記入し「直ちに」最寄りの保健所へ届出ください。(感染症法第12条)
※届出前に、届出基準の確認をお願いします。
※届出の際は、記入した様式をFAX(088-652-9334)、感染症サーベイランスシステムへの入力、いずれかの方法でお願いします。また、あわせて保健所までお電話(088-602-8907)ください。
届出基準及び発生届様式はこちらから:厚生労働省「感染症法に基づく医師の届出のお願い」