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レジオネラ症について

レジオネラ症

レジオネラ症という病気を知っていますか?

知らないと危険です。

今すぐに、きちんとした衛生管理体制を整えましょう。

レジオネラ症は死亡者が発生する感染症です。

レジオネラ症は、別名「在郷軍人病」と呼ばれています。その由来は、1976年7月21日から24日にかけてにアメリカのフィラデルフィアのホテルで開催された在郷軍人の200年祭で、参加者を中心に肺炎患者の集団発生が起こって初めて発見されたことに由来するレジオネラ属菌が原因で起こる細菌感染症です。急激に重症になって、死亡する場合もあるレジオネラ肺炎と、肺炎にならずに数日で自然に治る場合が多いポンティアック熱があります。

レジオネラ症の症状

レジオネラ肺炎
乳幼児や高齢者、病人など抵抗力が低下している人や、健康でも疲労などで体力が落ちている人が発病しやすいといわれており、多臓器不全を起こして発病後1週間以内に死亡する劇症型から抗生物質で治療するものまで種々ある。 主な症状:高熱・呼吸困難・筋肉痛・吐き気・下痢・意識障害 特徴:急激に重症になり死亡することもある。
ポンティアック熱
自然に治癒するインフルエンザに似た熱性疾患。予後は良く抗生物質等を投与しなくても治癒することもあるが、集団発生しやすい。 主な症状:発熱・寒気・筋肉痛 特徴:一般に軽症で数日で治ることが多い。

エアロゾル(水滴)が感染源です。

レジオネラ症は、レジオネラ属菌に汚染された目に見えないほど細かい水滴(エアロゾル)を吸い込むことで感染します。打たせ湯、シャワー、ジャグジーなどではエアロゾルが発生するので、循環式浴槽の場合は使用水を十分に管理しなければなりません。 レジオネラ症は人から人へは感染しません。

レジオネラ属菌とは

 レジオネラ属菌は、世界中に広く分布するありふれた菌で、湿った土壌中や河川、湖沼など自然界に生息しています。また、私たちの身の回りでは、空調冷却水、給湯施設などで多く検出されます。アメーバなどの原生動物に寄生し、20~50度(36度前後が最も発育に適しています。)で増殖します。
 肺炎の原因菌で、老人や抵抗力の低下した人に感染し、発病します。集団発生や、病院内感染例もあります。
 2~10日の潜伏期の後、頭痛、せきなどの初期症状が出て急激な発熱など肺炎の症状となり、抗生物質による適切な治療をしないと致死率は15%以上になるとされています。

レジオネラ症防止対策

  • <重要点>
    • レジオネラ属菌の繁殖を許す条件にしない。
    • エアロゾル(水滴)を発生させない。
  • <対策>
    • なるべく水温が20~45度の間になることを避ける。
    • 水が滞留することを避ける(水が滞留し、水温が20度を越えると、生物膜(ぬめり)の発育が促進され、この生物膜にレジオネラ属菌とその宿主である原生動物(アメーバ等)が繁殖する。)。
    • 配管内を清潔に保つ。
    • 施設の維持管理を充分に行う。
  • <滅菌方法>
    • 塩素滅菌 遊離残留塩素が適切な濃度になるよう注入する。
      • 手法が確立されている。
      • 末端の水栓で容易に濃度がわかる。
      • 機器・配管が腐食する可能性がある。
      • 塩素臭が残る。
      • トリハロメタンの発生の可能性がある。
    • 高温滅菌 70度以上に加熱する。
      • 火傷の危険性がある。
      • 菌が常に検出される場合に適している。
      • 安価で、容易に実行できる。
    • その他 オゾン滅菌・銀イオン滅菌等。

入浴施設での衛生管理

 レジオネラ症の発生防止し、安心して入浴施設が利用できるように、管理者は衛生管理を徹底しなければなりません。
 そのためには、次のような点に注意して下さい。

管理記録
各施設の自主的測定結果に基づく管理計画を立てて実施し、消毒・換水・清掃などの記録をつける。管理記録と細菌検査結果と保存して下さい。
残留塩素測定
レジオネラ属菌の消毒には塩素が有効です。残留塩素濃度を維持できるよう、測定キットによる定期的な測定を行って下さい。
細菌検査
レジオネラ属菌の検査は、衛生管理が適切におこなわれているかどうかを確認するためのものです。少なくとも年1回、衛生状態に応じて実施し、検査結果は3年以上保存して下さい。

 施設管理の責任が問われるなど、大きな問題が発生する可能がありますので注意して下さい。

浴槽・浴槽水の管理

  • 浴槽
    • 浴槽の水を交換する(換水)時は、衛生管理の水準を保つように行います。
    • レジオネラ属菌に汚染された場合の換水時は、必ず浴槽の消毒と清掃を行います。
  • 浴槽水
    • 消毒を徹底します。
    • 塩素剤による消毒の場合
      • 塩素剤は、湯がろ過装置内に入る前に注入(投入)する。
      • 残留塩素濃度の測定を実施し、0.2~0.4mg/lを1日2時間以上保つ。

入浴者に対する注意

入浴者に対しても汚染防止のために、入浴施設側から注意書き等で呼びかける必要があります。

  • 身体を洗ってから入浴する。
  • 露天風呂では身体を洗わないで下さい。

きちんと衛生管理されていない循環式浴槽の水が、感染源になっています!

レジオネラ症患者が発生した場合

 入浴施設においてレジオネラ症と疑われる患者が発生した場合、その施設及びその近隣の施設から、さらにレジオネラ症患者が発生することのないように対処する必要があります。施設の現状保持や使用の禁止など、原因究明に協力しなければなりません。

 また、独自の判断で消毒剤投入等の処理を行うと、原因究明が進まず営業再開が遅れることもあるので特に慎重な行動が要求されます。

汚染防止のための施設・機器管理のチェックポイント。

衛生管理を行う場合、その施設の利用状況や設備によって注意すべき点が異なります。

設備 問題点 対処方法
貯湯タンク

 貯湯タンクの中や配管では、お湯の滞留時間が長いため、低い水温ではレジオネラ属菌が繁殖しやすい環境となります。

  • ●湯温を常に60度以上に保つ
  • ●お湯を滞留させない
循環ろ過装置

 ろ過装置内で、レジオネラ属菌はアメーバなどに寄生し増殖します。また、浴槽や配管の内壁でもぬめり(生物膜)ができやすく、レジオネラ属菌の定着につながります。

  • ●ろ材の種類を問わず、ろ過装置自体がレジオネラ属菌の供給源とならないように、消毒を徹底する
  • ●逆洗して汚れを排出する
  • ●ヘアーキャッチャーを設置し、清掃する
気泡発生装置・ジェット噴射装置・打たせ湯・シャワー等

 気泡発生装置(ジャグジー)やジェット噴射装置、打たせ湯、シャワーなどは、エアロゾル(水滴)を発生します。

  • ●打たせ湯・シャワーなどには、循環式浴槽水を使用しない
  • ●空気取入口から土壌と一緒にレジオネレ属菌が入るのを防ぐ
露天風呂

 露天風呂は外界と接しているため、レジオネラ属菌に汚染される機会が多くなります。内湯よりも厳しく管理する必要があります。

  • ●露天湯が配管を通じて内湯に混じらないようにする
  • ●洗い場を設けない
24時間風呂

 24時間風呂といわれる循環型浴槽には浄化装置が付いていますが、このうち生物浄化装置と言って細菌が繁殖する場所を作って、そこで垢などの有機物を処理する方式は、レジオネラ属菌も増えます。特に泡ぶろの場合は、エアゾルが発生するので要注意です。

  • ●取扱説明書に書かれた方法で換水・設備の維持管理を行う
  • ●数日ごとに水を全て入れ替え(換水)、清掃を充分行う
  • ●浴槽には体の汚れを落としてから入りましょう
  • ●浴槽水・浴槽の壁面の状態等を毎日チェックする
  • ●にごりや壁面のぬめりが有る場合、換水・浴槽の清掃を行う
  • ●浴槽内のお湯をシャワーとして使用しない
冷却水

 空調用の冷却水は6~9月には、35度近くまで上昇します。もし、レジオネラ属菌に汚染されると、菌を空気中に飛散させるようになります。

  • ●節水のために濃縮倍率を上げない
  • ●冷却塔は清掃しやすい構造にする
  • ●毎年清掃・細菌検査を実施する
  • ●冷却塔の設置場所を考える
加湿器

 水を加熱して気化するタイプは、加熱により死滅するため比較的安全と考えられますが、超音波で水を霧状にするタイプのものは、水タンクの中でレジオネラ属菌が、繁殖し、部屋中に散布されレジオネラ症を引き起こす可能性が高くなります。

  • ●超音波加湿器を使用する場合は、常に水タンクの内面を洗浄して清潔に保つ
  • ●タンク内の水は毎日取替え、加湿には水道水を使用する
  • ●使用しない時は水タンクを空にし、良く乾燥させておく

施設における対処方法

  • 浴槽などの施設は、現状を保持したまま速やかに保健所へ連絡してください。
  • 独自の判断で浴槽内等への消毒剤の投入はしないでください。
  • 入浴施設の浴槽の使用を中止してください。

参考

  • 厚生省・(財)日本公衆衛生協会作成パンフレット
  • 新版 レジオネラ症防止指針 (財)ビル管理教育センター