徳島県の歴史を語る時、藍を避けることは不可能というくらい、我が県と藍の関わりは深いものです。
農業研究所では蓼藍の品種保存や栽培に関する研究業務を行っていますが、一般の方にも藍の魅力を身近に感じていただきたいと考え、このページでは主に研究テーマ以外の話題を提供いたします。
空の青、海の青・・、青は地球上で暮らす我々にとって、最も身近な色ではないでしょうか。青は仏教では仏の世界の清らかさを表す色とされ、タクラマカン最大の仏教遺跡「キジル石窟」には、ラピスラズリを使って描かれた青の壁画が残されています。
欧米では花嫁が結婚式当日に何か青いもの身につけると幸せになれる「サムシングブルー」(注)という習慣があり、忠実・信頼を象徴する色とされています。幸せの鳥も青色ですね。
甕覗(かめのぞき)、浅葱色(あさぎいろ)、納戸色(なんどいろ)、褐色(かちいろ)・・・、これらはすべて青の名称です。色の微妙な濃淡で呼び名がそれぞれ異なります。昔の日本人の豊かな色彩感覚、その片鱗をうかがうことが出来ます。
藍染めはかつて日本人にとって、もっとも身近な染め物でした。今ではサッカー日本代表の色のように思われがちですが、ジャパンブルーとは本来藍染めの色なのです。
(注)「サムシングブルー」は花嫁が身につけると幸せになれるとされる4つのもの、「サムシングフォー」のうちの1つ。ちなみに、あとの3つは「何か古いもの」「何か新しいもの」「何か借り物」だそうです。
藍に含まれる色素、インディゴは、生葉中では無色のインジカンという配糖体として存在しています。葉の組織が破壊されると酵素の働きでインドキシル(無色)になります。インドキシル2分子が結合することによって、青色のインディゴになるのです
またインドキシルが単分子で酸化されるとイサチンという物質を生じ、未酸化のインドキシルと結合すると、何と赤色のインジルビンができます。藍から赤色色素が生じるとは驚きですね。藍の生葉染めで紫色に染色できるのは、この現象を利用しているのです。
なお、インディゴは不溶性なので、インディゴが生成された後は繊維に染みこませることが出来ず、染められません。
そこで藍染め(発酵建て)ではインディゴを細菌の力で水溶性のロイコ体インディゴ(還元型のインディゴ、黄色をしています)にして繊維に含ませ、さらに空気に触れさせてインディゴに戻すことで染色しているのです。
藍染めは青い染色液で布を染めていると誤解されているかもしれませんが、染色液中のインディゴはほとんどがロイコ体インディゴなので、染色液は黄色がかった褐色をしています。
「すくも」とは、乾燥させた葉藍を堆積し、水分を加え発酵させた物を指します。本格的な「すくも」の製造は高い技術と経験が必要になりますが、ここでは気軽に(?)挑戦していただける小規模な「すくも」の製造方法をご紹介します。趣味で染色を行うには十分な品質の「すくも」が作れると思います。
当研究所で毎年行っている一般公開イベント用の「すくも」はこの方法で作っています。
なお、作る季節によって完成までの期間等が変化しますのでご注意下さい。当所では9月下旬に仕込んでいます。
(注)下記の方法は筆者が独自に行っているもので、改良する余地が多分にあります。ご了承下さい。
乾燥葉藍。この程度に砕けた物を使いました。畑から茎ごと刈り取り天日乾燥させた後、竿などで叩けば葉と茎を分けられます。少々茎や花穂が混じっていても大丈夫です。写真の葉藍は「小上粉」以外の品種や何百もの育成中の系統がブレンドされています。良し悪しは別にして、他では手に入らない代物です。
当所で使用しているポリのたらい(直径60cm高さ30cm)倉庫の片隅で眠っていた廃品利用。ドリルで全体に穴をあけてあります。もちろん底面にも。余計な水分を逃がす工夫です。すくも作りは水分管理が重要です。
なるべく温度変化の少ない、直射日光の当たらない場所がいいでしょう。なお、発酵中は強烈な臭いが発生しますので、それなりの場所で挑戦してください。
「7.」写真1
まず、発酵中のすくもの上に布を敷きます。写真は餅つきに使う「ふかし布」ですが、水分さえ吸収できれば何でも良いでしょう。
「7.」写真2
その上に断熱材で内蓋をします。夜間はこの上に上蓋を乗せておき、日中は上蓋を外しておくなど、水分コントロールの工夫をします。布が湿ったら交換します。
「9.」写真
当所ではポリたらい2個分の加水した葉藍が、約1~1.5ヶ月ですくもに仕上がります。
ポイントはいかに温度を保ちながら水分を適度に減らしていくかです。特に後半は水分が多いと失敗しやすいです。
すくもが完成したら藍染めに挑戦してみましょう。すくもにアルカリや糖分を加えて発酵させ、染色できる状態にする事を「藍を建てる」といいます。ここでは当研究所の公開イベント用に建てたものについてレポートします。
注)本格的な灰汁発酵建ではありません、筆者の自己流です。1例としてご覧下さい。
その他、材料を溶かすための小さいバケツや、かき混ぜるための棒も使用しました。
容器には加温用の電熱線と断熱材を巻き付けます。
床には断熱材を敷き、その上に容器を乗せます。
すくもをお湯で溶かします。
ぬるま湯で結構です。
溶けやすいように良くこねます。
・・・素敵な香りがします・・・。
お湯で溶かした小麦粉を加えます。
少々ダマになっても平気です。
同じくハチミツと黒砂糖を、お湯で溶かして加えます。
ハチミツだけでも問題ありませんが、今年はちょっとバクテリアにサービスしてみました。
・・・おいしそうです。
お湯を加えてかさ上げします。
全体で40リットルにしました。
(発酵期間中、数回に分けてかさ上げする方法が一般的です。)
消石灰を加えてよく混ぜます。
目標PHは11です。
蓋は軽めにしておきます。
以上で仕込みは終了です。
今年は2つの容器で作ります。
仕上げの段階で液温が40℃近くありました。
基本的に液温は25℃程度をキープしますが、藍が建つまでは30℃近くあっても良いようです。
藍が建つまでは1日数回、攪拌します。
青い泡(藍の華)がかすかに見えています。
生まれたてのブルーです。
仕込みから約24時間後、表面に膜が出来はじめました。
時々PHを測定して、11をキープします。下がっていたら消石灰を加えて調節します。
朝と夕に攪拌。
朝1回しか攪拌しませんでした。
前日の手入れが不十分だったためか、思ったより発酵が進んでいませんでした。
朝1回たっぷりと攪拌。
ハチミツ200gと消石灰400gを追加しました。
朝と夕に攪拌。
公開(11月11日)に間に合わせるため、温度を25℃→30℃にアップ。朝と夕に攪拌。
藍の華が濃い色になってきました。
木綿布を染めてみます。
液に浸す→空気にさらす
これを繰り返すことで濃色になります。
なんとか染まりました。
まだ染色液の熟成が足りませんが、研究所公開には間に合うでしょうか?
もう少し石灰を追加する予定です。
熟成が進んできたら、1日最低1回、攪拌します。
また液温は20℃を下回らないように管理します。
染色液の様子を見ながら時々ハチミツや日本酒を加えますが、その量は染める頻度や量などによって変化するので記述しません。ただ、あまりシビアに考えなくても大丈夫です。