課題
阿波尾鶏は「日本三大地鶏」として有名な比内地鶏、さつま地鶏、名古屋コーチンを抑えて、生産量日本一の徳島県を代表する地鶏だが、海外産の鶏肉に比べると高価なため、若年層のファン獲得には常々苦悩している。
どのようなレシピや広報が若者の心に響くのか、一緒に考えていきたい。
参加者
大学生10名(徳島大学・徳島文理大学)
●ファシリテーター (進行役)
里見和彦
とくしまアントレプレナー塾 代表
徳島県信用保証協会 創業アドバイザー
産業振興機構 創業アドバイザー
NPO法人チャレンジサポーターズ 理事長
フューチャーセッション
●実施日:(計4回)2022年8月9日(火)/8月18日(木)・10月8日(土)・12月16日(金)・2023年3月6日(月)
第1回
2022年8月9日(火) 16:00~/8月18日(木) 18:00~ ●場所:オンライン開催 ●参加者:大学生9名(徳島大学)/大学生4名(徳島文理大学)
顔合わせ、企業の課題共有
初回FSという事でオンラインにて、企業・参加者・ファシリテーター・事務局の顔合わせを行った。(コロナ禍を配慮し、オンライン会議で実施。)ミラトク趣旨説明~各社自己紹介ののち、丸本より会社紹介行い、企業課題「若い世代向けへの阿波尾鶏の販売促進」について詳細を共有した。
第2回
2022年10月8日(土)10:00~ ●場所:株式会社丸本 ●参加者:大学生7名
企業をよく知り、課題の解決策について話し合う
丸本本社にてFS2回目を実施。本プロジェクトのメンバーの他に「若い人材の呼び込み」プロジェクトのメンバーも同時参加した。
各部署の社員さんより説明を受けながら会社見学(商品開発→品質管理→食品加工場)を行い、丸本の業務内容について学んだ。
また昼食には、丸本オリジナル商品「DMVカレー」を頂く。海陽町のDMV(デュアル・モード・ビークル、2021年冬より運行開始した線路と道路の両方を走る乗り物)にちなんだ商品で、ルーが2種類入っており、そのまま単独で食べてもルーを合わせて食べてもOK!いろいろな食べ方を楽しんでもらえる商品である。
盛り付けは丸本の若手社員が考えた3種類をランダムで配膳してもらい、商品開発を進めるうえでのヒントを学ぶことが出来た。
続いて午後からは学生が考えた課題解決案のプレゼンテーションを実施。
「若年層向けの阿波尾鶏販売促進」チームからは、若者目線の商品開発の意見が出た。
阿波尾鶏は通常の鶏肉よりは金額が高いことが多く、比較的年齢の高い方に購入される傾向がある。
若年層である参加学生が、「実際に自分が阿波尾鶏を買うなら…どういったメニューで、どういった場面なのか」を考えた。
今回出た意見としては、
・冷凍食品やレトルト、ミールキットがいつでも食べやすく若い層には人気
・冷凍食品人気No.1の「餃子」を阿波尾鶏で作れないか。鶏のだしを活かした水餃子等はどうか。
・餃子の無料販売所も県内で増えているので、そのルートで販路拡大できないか
というものがあった。こちらも、餃子市場の中に今から入っていくには他メーカーの競合が多く難しいかも…等のフィードバックがあった。
今回出た意見を元に、より深掘りしていくか、別の手法を考えるか、引き続き参加学生・企業で検討していく。
以下は、当日の打合せ内容を学生がまとめたグラフィックレコーディング。
第3回
2022年12月16日(金) 18:00~ ●場所:オンライン開催 ●参加者:大学生5名
若者目線で阿波尾鶏レシピを提案
WEB会議にて実施。参加学生から多くの商品案が提出された。そのうち「ご飯の御供」と「生茶漬け」をさらに深掘りしていく。具体的な販売方法やパッケージの考案が課題となった。他に提案のあった阿波尾鶏ギョーザについても丸本からのアドバイスがあり、学生目線で、みんなが食べたいものではなく、若者が貰ってうれしい商品を次回提案することとなった。
第4回
2023年3月6日(月) 9:00~ ●場所:セーラー広告(株)徳島支社 ●参加者:大学生4名
ブラッシュアップしたレシピを提出
オンラインにて実施。商品開発は、商品化するのも製造工程(現状丸本内の設備で製造可能か?手間のかかる作業は無いか?)、原価計算(鶏肉のどの部位を使うか?また鶏肉以外の食材を使用する場合どこからどれくらいの価格で仕入れるか?)、ロット数(賞味期限を鑑み現実的な販売数をどれくらいに設定するか)、販売場所(県内?県外?オンライン?無人販売など新規開拓?)、展示方法(試食会や展示会への参加?)、バイヤー対策(展示会等での魅力的なアピール方法)など様々な課題があり、さらに売れる商品をつくるとなるとかなりハードルが高いという事が分かった。※特に、丸本は阿波尾鶏のメーカーとして約130億円の売上がある企業であり、商品化の基準も高い。
そのような背景の中、学生たちもそれぞれでネット調査を駆使して様々な提案をし、商品化が可能かどうか?どこで、どのように、いくらで販売するのか?などを検討した。
学生からの案として、
1. 阿波尾鶏 鶏皮せんべい
2. 阿波尾鶏 ご飯のお供
3. 阿波尾鶏の出汁を活かした生茶漬け
4. 阿波の幸(阿波尾鶏×季節の野菜パックのサブスク)
5. アジアの料理×阿波尾鶏(フィリピン、ベトナム、台湾)
について、それぞれ発表した。
それぞれの商品開発のアイデアに、
〇ターゲット・目的
〇販売場所
〇価格帯
〇味の種類
〇ポイント、考案理由
〇パッケージイメージ
〇売り場イメージデザイン(手書き)
を検討し、バイヤーへの提案資料として必須な、FCPシート(FOOD COMMUNICATION PROJECT)を作成した。FCPシートを作成する過程で、商品開発には味や価格以外に、様々な必要項目を全て決めていかなければいけないことがより実践的に理解できた。
また別の参加者からは、
4.阿波の幸(阿波尾鶏×季節の野菜パックのサブスク)に取り組んだ発表があった。
阿波尾鶏の良さを引き出すために、徳島の野菜に着目し、出汁の特徴を野菜との相乗効果で阿波尾鶏のさらなる特徴を活かす商品だ。それを春・夏・秋・冬の季節ごとの年4回シリーズでサブスクリプション(定期購入)していただくことで、阿波尾鶏のファンづくりだけでなく徳島の野菜のファンづくりにも貢献しようと企画した。
最後に、
5.アジアの料理×阿波尾鶏(フィリピン、ベトナム、台湾)
として、海外の鶏料理を調査し、阿波尾鶏の特徴を活かしたアジアの料理を検討した。
海外の料理については、徳島で実際に海外の方が経営する飲食店にヒアリングを行った。
・フィリピン料理 Terrace38
・ベトナム料理 ベトナムキッチン
・台湾料理 漂流食堂
各店主さんに、阿波尾鶏の特徴は、「低脂肪、若鶏と比べて色合いが良い、食感が噛み応えが強い、イノシン酸が多い」ことなどをお伝えし、これらの特徴を活かすには、【1】焼く 【2】煮る の2つの調理法をお聞きしました。
今回は、商品開発のハードルが想像以上に高く実際に作って販売するまではできなかったが、実際の店舗にうかがって、阿波尾鶏の活用方法について様々なご意見をいただくことができた。
世界各地で、鶏料理は日常的に使用されており、Made in Japanで生産量日本一の阿波尾鶏の競争力は無限にあることを感じた。この海外版の阿波尾鶏×世界の料理も1回3,000円のセットでサブスク販売できないか可能性を探っていきたい。
■成果物
学生提案「若年層向け阿波尾鶏商品アイデア」
・
【商品開発】熊野商品開発案.pptx
・
【商品開発】尾原食品開発提案.pptx
プロジェクト後記
今回のプロジェクトでは、丸本の「若年層向けの阿波尾鶏販促」という課題に対し、
不慣れながらも若者に必要とされる阿波尾鶏商品はどんなものか、商品開発のフローや確認項目を学びつつプロジェクトを進行し最終的には企業へのレシピ提案となりました。
プロジェクト後の意見は次の通りです。
【学生からの意見】
●今回は、マーケティングの視点から食品開発にチャレンジさせていただいて良い経験になった。
●食品開発には、様々な検討が必要で、味や栄養素だけでなくまだまだ勉強や経験が必要だと痛感しました。でも、食品開発の魅力がわかり、もっともっと経験していきたいと思いました。
●実際に店舗に伺って、いろいろな話を聞くことはとても良い経験になりました。阿波尾鶏が世界の料理に使われるのを想像するとワクワクしました。
また学生からの提案レシピに関しての企業のフィードバックは以下です。
【丸本からのフィードバックシート】
1.商品開発案A(鳥皮せんべい、ご飯のお供、生茶漬け)のレシピについて
(1)良かった点
鳥皮せんべい、ご飯のお供、生茶漬けの3品をご提案頂きその中では鳥皮せんべいが一番学生目線で考えられており良かったと思います。
他2品はすでに類似品が販売されている点、現行の阿波尾鶏関連商品も同じ様なデザインになっている事を考慮すると目新しさに欠ける感じがします。
(2)改善点(今後どうすれば、商品化を目指せるか?)
鳥皮せんべいに絞りますが普通はフライ調理を行うのですが焼き工程で商品化する事になるのでフライ調理時の様な食感が出るのか?がポイントになるかと思います。
(3)要検討点(御社内の設備のご事情等)
鳥皮の加工は手間がかかり難易度が高い商品となりますので外注も視野に入れ検討する必要があります。
2.商品開発案B(地鶏と季節の野菜パック、アジア料理×阿波尾鶏)のレシピについて
(1)良かった点
地鶏と季節の野菜パック、アジア料理×阿波尾鶏のご提案を頂きました。地鶏と季節の野菜パックに関してはふるさと納税での販売で進められそうと感じました。
アジア料理×阿波尾鶏に関しては現状新しい取り組みとしてレトルト商品で同じ様なコンセプトで販売を計画しておりましたので参考にさせて頂きます。
(2)改善点(今後どうすれば、商品化を目指せるか?)
地鶏と季節の野菜パックに関しては合わせる野菜の選定と仕入れをどうするかがポイントになるかと思います。
アジア料理×阿波尾鶏関してはレトルト商品に出来そうなメニューを選定し試作をしたいと考えます。
(3)要検討点(御社内の設備等のご事情等)
料理レシピの作成、野菜の仕入れ先の選定が要検討となります。
以上を受け、今年度提案のあったレシピで実際に試作を作り、チームや丸本内で協議し、県内飲食店やビジネスメッセで試作のテスト配布実施などを検討していきたい。