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特集1:農業をもっとスマートに、そして未来へ。【令和3年10月号】

OUR徳島10月号特集1表紙イメージ

スマート農業の時代がやってきた

 ロボットや情報通信などの先端技術を活用することで、作業の省力化や生産物の高品質化を実現する「スマート農業」。生産者の高齢化や担い手不足が進行する中、これまでの農業のイメージを変え、新たな未来を切り拓く有力な手段として注目されています。すでに県内のJAなどでもスマート農業への取り組みが始められており、耕作放棄地の解消や省力化など、少しずつ成果が見え始めています。

技術の導入や実践をサポート

 県では昨年、施設園芸のエキスパートを育てる「施設園芸アカデミー」を開講。さらに今年は、自治体として全国に先駆けて「ローカル5G基地局」を農林水産総合技術支援センターに開局し、高速大容量のネットワークを活用した実証実験を農業分野でもスタートさせました。今後もスマート農業のさらなる普及に向け、技術開発や担い手の育成、機器の導入支援などを行っていきますので、ご期待ください。

「スマート農業」を、学び、実践する、新たな時代へ。

地域農業の課題に立ち向かうため、スマート農業を導入。

JA美馬 田中 浩司(たなか こうじ)さん

600を超える農地を管理し続けるために

 高齢化や後継者不足により、遊休農地が増加傾向にあったJA美馬では、平成18年に「アグリサポート美馬」を設立しました。

 「中山間地域で農地が点在しているため維持管理が難しく、専業農家による一括管理も厳しい状況にありました。農家からの要請もあり、農作業の受委託を行う組織が必要となったのです」とJA美馬の田中さんは振り返ります。

 アグリサポート美馬の設立から約15年が経ち、農家へのサポート内容はさらに拡大。農業経営の受委託だけでなく、維持管理ができなくなった農地をまるごと借受け、農業経営を代行するサービスも始めました。

 「すでに600を超える農地を借受けていますが、すべての農地の場所や作業内容をスタッフ一人ひとりが把握し、多くの経験を必要とする農作業を季節ごとに行うのは非常に難しいこと。そこで取り入れたのがスマート農業です」

 県の協力も得て、タブレットの画面に管理する農地の場所や作業の進捗状況などを表示できる農地管理システムをはじめ、自動走行するロボットトラクターや、収穫時に品質や収量をデータ化するコンバインなども導入。農作業の省力化や大規模化につなげるとともに、若手にも取り組みやすい作業環境を実現しています。

 「今後は農作業の支援だけではなく、スマート農業の普及にも力を入れたい。若い世代が地域の農業を支え、私たちと共に地域を盛り上げていくことが理想だと思います」と田中さんは未来への抱負を話してくれました。

●農業用ドローンで、農薬の散布作業を効率化しています。
●刈取り時に収量などが把握できるコンバインとJA美馬の田中さん(左)、アグリサポート美馬の黒長さん。

さらなる高収量・高品質を目指し、施設園芸アカデミーに参加。

トマト農家 尾田 正和(おだ まさかず)さん

環境制御技術を高め世界水準の収量を目指す

 会社員だった尾田さんが、祖父の代から続く実家のトマト農家への転職を果たしたのは約10年前のこと。農業を始めてから数年後に“環境制御技術”という言葉に出会ったと言います。

 「それまでのトマト栽培は、長年の経験や勘がモノを言う時代でした。水のやり方一つをとっても、その日の天気や温度を肌で感じて決めるという感じ。それに比べ、データに基づいて水や肥料の量やタイミングを自動管理できる環境制御技術は、若手だった自分にとってもすごく魅力的なものでした」

 尾田さんが施設栽培に環境制御技術を取り入れてから約7年が経ち、トマトの収量は当時と比べて約30%アップ。その成果は確実に現れていると言います。

 「3代目として父から事業を継承するにあたり、一人前になるためのステップとして選んだのが施設園芸アカデミーの受講でした」

 施設園芸アカデミーは、昨年7月に農業大学校が民間企業と連携して開講。施設栽培における環境制御技術を駆使する人材の育成を目的としています。

 「現場研修や座学を通じ、高収量・高品質を実現するための知識を1年間にわたって学べるのは本当に大きいですね。参加者たちの環境制御データを持ち寄り、専門家の解説を受けながら、それぞれの良い部分を吸収できるのも他にはない魅力です」

 この講座を通じて出会った生産者との横のつながりを大切にしながら、さらなるレベルアップにつなげていきたいと意気込む尾田さん。スマート農業への挑戦は、これからも続きます。

●この日は、栽培施設で専門家からリモート講義。
●さらなる高収量生産を目指し、施設園芸アカデミーを受講する尾田さんら2期生の皆さん。

積極的な技術開発で、スマート農業を実現!

県では、日々進化する通信技術・農業機器を活用した栽培の研究や先端技術を駆使する人材の育成などを推進。スマート農業の実現に向けた取り組みを加速させています。

農業における5Gの活用

農林水産総合技術支援センターに「ローカル5G基地局」開局(R3.4.8)

  • 自治体で全国初!屋外利用に最適な「4.8GHz帯」の活用
●ローカル5Gアンテナ

5Gとは

  • 超高速現行4Gの100倍速いブロードバンドサービスを提供
未来技術の実装

●農業大学校へのスマート技術導入

  • スマートグラスで作業のポイントを学べる「実習システム」の整備
  • 熟練農業者の「匠の技」のデジタル教材化
  • タブレットによるリモート授業
●「スマートグラス」を活用した実習

●スマート技術の開発

  • 「AI」を活用した果樹の「作業支援システム」の開発
    • ▲ミカン、ウメなど果実の「収穫適期」を判断
●「AI」による熟度判別
  • 「ドローン」を活用した病害虫防除技術の開発
    • ▲病害虫の発生状況を迅速かつ正確に把握、被害箇所をピンポイントで防除
●「ドローン」による被害の把握

施設園芸アカデミー講座概要

※今年度の受講生募集は終了。次年度の募集は令和4年4月頃の予定です。

スマート園芸入門コース

施設園芸における環境モニタリングや植物生理に基づく環境制御技術の基礎を座学で学ぶ。

  • 講座ア:総論クラス(品目全般) イ:各論クラス(キュウリ)

スマート園芸実践コース

施設トマト栽培において、高収量、高品質を実現する環境制御技術について現場研修と座学で学ぶ。

  • 研修期間7月~翌年3月(全8回)

●施設園芸アカデミーのお問い合わせは

農業大学校
TEL:088-674-1026

アグリビジネスアカデミー(外部サイト、別ウインドウで開く)