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特集1:世界農業遺産に認定!「日本の農業の原点」にし阿波の傾斜地農業【平成30年9月号】

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中四国で初めて世界農業遺産に認定

 県西部の”にし阿波”と呼ばれる地域(美馬市・三好市・つるぎ町・東みよし町)では、400年以上にわたって急峻な傾斜地を利用した農業が続けられてきました。社会や環境に適応しながら何世代にもわたって形作られてきた伝統的な農業は、今年3月9日に「にし阿波の傾斜地農耕システム」として中四国で初めて世界農業遺産に認定されました。日本の原風景とも言える山村景観や食文化、農耕にまつわる伝統行事など、地元の人々の手で守られてきた暮らしの在り方が評価されています。
 

にし阿波

400年の知恵と工夫を現代に受け継ぎながら

 棚田のような水平面をつくらずに傾斜地のまま農耕し、カヤなどの敷き草によって土壌流出を防ぐのが傾斜地農業の特徴です。場所によっては斜度40度にもなる畑で農業を行うため、サラエやテンガ、フタツバなどと呼ばれる独自の農具を使用。ソバやアワなど在来品種の雑穀をはじめ、伝統野菜や山菜などを少量多品目で栽培しています。「にし阿波の傾斜地農業」は、日本の農業の原点とも言える農耕システムを現代へと受け継ぎながら、里山の暮らしや優しい風景を守り続けています。

にし阿波の傾斜地農業 里山の美しい景観 自然と調和した人々の暮らし。

世界農業遺産に認定され、国内外から注目を集める”にし阿波”。そこには、昔と変わることなく地域の農業や文化を守り、未来へと伝え続ける人々の笑顔があります。今回は、農家や民泊、レストランなど、それぞれの立場で傾斜地農業と関わる方々にお話を伺いました。それぞれの言葉から、傾斜地農業の魅力や可能性を感じてみてください。

自給自足の暮らしを受け継いで

ここでとれた作物はほんまにおいしい。

農業 磯貝勝幸(いそがいかつゆき)さん・ハマ子(はまこ)さん(つるぎ町)

磯貝さん夫婦
●傾斜地農業によって栽培したアワを手にする磯貝さん夫婦。

 ご主人が生まれ育ったつるぎ町で、40年以上にわたって傾斜地農業を営んできた磯貝さん夫婦。麦やソバ、タカキビやコキビなどの雑穀や季節の野菜など、少量多品目の作物を栽培してきました。「この家では先祖代々、400年以上にわたって農家を続けています。傾斜地なので水はけが良く、ここで出来た作物は本当においしいんでよ」とハマ子さんは話します。

 昨年11月には、磯貝さん夫婦がつくったアワを、宮中行事の新嘗祭(にいなめさい)に献穀。皇居で行われた式典にも招かれるなど、ご夫婦にとっても思い出深い年になりました。「教育旅行で訪れた子どもたちが、ここの料理や風景に笑顔になってくれるんよ」とご夫婦。傾斜地農業の伝統を、さらなる未来へとつなげています。

納屋
●納屋には収穫された作物が保存されています。

旬の食材を活かした料理を提供

空気も水も風景もすべてが宝物です。

農家レストラン運営 大竹 一(おおたけはじめ)さん(美馬市)

大竹一さん(後列右)とご家族
●東京から移住し、農家レストランの運営に携わる大竹一さん(後列右)とご家族。

 昨年7月、素朴な里山の風景が広がる美馬市穴吹町渕名地区に、農家レストラン・風和里(ふわり)がオープンしました。人口減少や高齢化が進む地域の活性化を図ろうと地元住民が主体となって運営。傾斜地農業によって栽培した野菜などを、ランチとして提供しています。

 「地域みんなで支え合っているのが、このレストランの魅力です」と話すのは、妻の出身地の渕名地区へ移住した大竹一さんです。地域で取り組んでいる”農泊ビジネス”では、レストランが宿泊者の食事の一部を担当。宿泊・体験・食事を地域で分担して行うことで、新しい農泊ビジネスの可能性を生み出しています。「ここに来たら、空気も水も風景も全部味わってほしい」と大竹さんは笑顔で話してくれました。

傾斜地農業体験
●傾斜地農業体験には多くの方が訪れます。

鳥獣被害対策を地域の力に

訪れる人がふるさとの価値を教えてくれるんよ。

民宿経営 木下正雄(きのしたまさお)さん(東みよし町)

木下さん
●傾斜地農業のシンボルとも言える”コエグロ”の前で木下さん。

 300年以上前から、傾斜地農業によって自給自足の生活を営んできた木下家。その歴史を受け継ぐ木下正雄さんが、傾斜地農業の鳥獣被害対策のために狩猟免許を取得したのは20年以上前のことでした。5年前には獣肉処理加工施設を自宅に設け、夫婦で経営する民宿で猪や鹿のジビエ料理を振る舞うように。素材の味を活かした新鮮でおいしい料理は、宿泊に訪れる人々から好評を得ています。

 傾斜地農業の魅力を伝えるため、仕掛けた罠の見回り体験や農作業体験なども実施。「流通に経費を掛けるのではなく、この場所で消費をしてもらうことが大事」と木下さん。訪れる人々の笑顔を自らの誇りに変えながら、これからも故郷の豊かさを守り、伝え続けます。

ジビエ料理
●県の「うまいよ!ジビエ料理店」にも認定されています。

循環型農業の技術や豊かさを、世界へ。

大島理仁さん
●徳島剣山世界農業遺産推進協議会事務局 大島理仁(おおしま まさひと)さん

にし阿波の傾斜地農業が、世界農業遺産に認定されたことを大変嬉しく思います。農業的に不利と思われがちな傾斜地で、地球環境に優しい循環型農業を続けてきた経験は、世界の食糧安全保障への貢献にも活かせると考えています。日本の原風景とも言える豊かさを観光などの分野にも活かし、地域の方々が安心して暮らし続けられる仕組みをつくっていきたいですね。


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お問い合わせ先

徳島剣山世界農業遺産推進協議会

電話番号:0883-62-3111
FAX番号:0883-62-4944

徳島県西部総合県民局 農林水産部〈美馬〉

電話番号:0883-53-2271
FAX番号:0883-53-2084